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4-15.発行

 

Q4-15-2:電子式船荷証券の通数は、どのように判断されるのですか。数通発行ということはあり得ますか。

1.紙の船荷証券の通数が、正にそのオリジナルが何部作成されたかということからすれば、電子式船荷証券の場合も、最初に運送人が作成したメッセージが何回送られるかということで、通数を観念できるでしょう。それが、登録機関に登録されるとすれば、同一内容のものが何回登録されるかにより、通数を観念できます。そして、関係者がそれを望むならば、数通発行ということも可能でしょう。

2.しかし本来、一個の義務について同一内容の証券を複数通発行するというのは、きわめておかしな制度です。複数通あれば、それが二重に譲渡されるのを理論的に防止できませんし、その場合の優劣も決める必要があり、しかもその優劣の制度は、所持人からすれば、実は自分の所持する一通は劣後順位でありただの紙切れかもしれないという途方もないリスクをもたされるものであるからです。

にもかかわらず、船荷証券において複数通の発行という実務があるのは、はるか昔の郵便以前あるいは郵便事情も悪い時代に、一通だけだと船積地にいる荷送人(ないしその金融機関等である通知銀行)から陸揚地にいる荷受人(ないしその金融機関等である信用状発行銀行)になかなか届かない可能性があるということから生まれた独特の慣習と言わざるを得ません。

電子式船荷証券において数通発行を認めることは、百害あって一利なしです。

3.因みに、かつて1990年に、万国海法会(CMI)が抽象的な電子式船荷証券の発行・流通・回収のメカニズム(換言すれば電子式船荷証券における関係者の権利義務関係の抽象的モデル)として制定したCMI Rules for Electronic Bills of Ladingでも、昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/LのRulebookでも、この点敢えて明記されていませんが、一通であること(Bolero B/Lの場合で言えば、Title Registryに登録されるBolero B/Lデータは一つだけであるということ)は当然の前提となっています。

4.なお、電子式船荷証券のシステム的なフェイル・セーフの問題として、当該システムにおける電子式船荷証券データのバック・アップが常に作成・保管されるようになっている可能性があることは、もとより別次元の問題です。

 

 

 

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