3-1. 電子商取引と船荷証券に関する問題
Q3-1-4:では何故、船荷証券が所有権確保や、質権設定の為に重要だと言われているのですか?
上記の様に、所有権や質権等の所謂「物権」は、当事者の意思表示のみで移転出来ます。今、仮に或る動産の所有者が、その動産の所有権をAさんに譲渡し、更に同じ動産の所有権をBさんにも譲渡した場合、その動産の所有権はAさんのものでしょうか?それともBさんのものでしょうか?
この様な場合に備えて、民法には次の様な規定が有ります。
民法178条[動産物権譲渡の対抗要件‐引渡し]:
「動産に関する物権の譲渡はその動産の引渡しあるに非ざれば之を以って第三者に対抗することを得ず。」
つまり、その動産の引渡しを受けている方の勝なのです。又、質権に就いても次の様な規定が有ります。
民法342条[質権の内容]:
「質権者はその債権の担保として債務者又は第三者より受け取りたる物を占有…」
同344条[要物性]:
「質権の設定は債権者にその目的物の引渡を為すに因りてその効力を生ず。」
同352条[対抗要件]:
「動産質権者は、継続して質物を占有するに非ざれば、その質権を以って第三者に対抗することを得ず。」
これらから明らかな様に、動産の所有権譲渡を受ける者、動産の質権者になる者にとって、「動産の引渡し」を受けることは、自己の権利の安全確保の為に、是非とも必要なことなのです。
しかし、運送中の貨物の場合、その所有権の移転や、質権の背定の為に、実際に「運送品の引渡し」を受けることは、困難です。そこで、法律は、船荷証券に特別の効力を与えることで、この困難の解決を図っています。