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(注2)船荷証券を担保(pledge)として提供することは、物品を担保として提供した効果を生じる旨の判決がある。 Official Assignee of Madras v. Mercantile Bank of India Ltd.[1935]A.C. 53, 60.

(注3)“nemo dat quod non habet(自らもたざる物を与えることはできない)”という一般原則:権原(title)のない者から譲渡を受けても、その物についての権原を取得できず、真の所有者に対抗できないという原則を示す法格言。

 

船荷証券の譲渡人により、対価(valuable consideration)を支払った譲受人に対して、同証券に記載されている物品の所有権(ownership)を移転させる意思をもって船荷証券を譲渡するときは、船荷証券の譲渡により物品の所有権が譲受人に移転します。船荷証券の譲受人が対価を支払わなかった場合には、船荷証券に記載されている物品の所有権を取得することはできません。

船荷証券は、譲渡担保(mortgage)または(動産)質(pledge)として、譲受人に引き渡されることがあります。船荷証券の譲渡が、譲受人に対する物品の所有権移転であるのか、譲渡担保または質としての提供であるかは、譲渡人の意思によります。[Sewell v.Burdick(1884),10 App.Cas.74.]

ロ.1992年海上物品運送法

英国のコモン・ローでは、船荷証券を裏書き・譲渡しても、運送契約当事者の地位が荷送人から荷受人に移転することはありません。そのために、1855年英国船荷証券法(Bills of Lading Act 1855) により、流通性船荷証券の裏書・譲渡または交付により運送契約上の地位が荷送人から荷受人に移転する措置が講じられたのです。同法は“Carriage of Goods by Sea Act 1992”の制定により改正されました。1992年海上物品運送法が適用される運送書類は、船荷証券(B/L)、海上運送状(SWB)及び荷渡指図書(D/O)です(同法第1条第1項)。

また、同法にいう船荷証券には、裏書によるか、または持参人式(to bearer) 証券のように、裏書を要せず、単に交付(delivery)によるか、いずれかの方法で譲渡(transfer)できるものが含まれ、それ以外の書類を含みません(同法第1条第2項a号)。同法には、船荷証券の定義はありません。コモン・ローでは、船荷証券の譲渡は物品の権原を移転させるに止まり、船荷証券に記載されている運送契約の譲渡(assignment)としての機能は認められていません[Thompson v.Dominy(1845),14 M.& W. 403;Sanders v.Vnzeller(1843),3 G.& D.580]。コモン・ローにおいて、荷送人の「指図人」(“to order or assigns” of the shipper)の文言、その他譲渡に関する当事者の意思の記載のない船荷証券は、これを譲渡しても、証券に記載されている物品の所有権その他の権利を譲受人に移転させることはできないのです[Henderson & Company v.Comptoir d'Escompte de Paris(1873), L.R. 5 P.C.253]。

 

 

 

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