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売主は、船積書類の引渡によってのみ、代金請求を行うことができるのであり、現物の引渡による代金請求はできません。同様に、買主も、船積書類の提供を条件として代金支払いを行うのであり、物品の引渡を条件とする代金支払を要求することはできないのです。

このような基本的義務に従って、CIF契約では、実務上、売主は、買主宛てに手形を振出し、これを船積書類と一緒に買主に呈示して、船積み貨物の処分権を留保し、買主の代金支払を確保します。買主にとっても、船積書類によって、契約どおり約定品の船積が行われたことを確認し、また船荷証券によって運送品の引渡請求権、処分権を取得するので、安心して代金の支払いを行うことができる。換言すれば、安全な国際商取引は、CIF条件による引渡と荷為替手形決済を条件とする売買契約であるということができるのであり、その中心に流通性船荷証券が存在するのです。なお、これを一層確実なものとするために、荷為替信用状とトラストレシートを使用する慣習が第一次世界大戦後に発達しました。

しかし、第二次世界大戦後における急速な貿易取引の拡大にともなって、貿易関係書類の作成に要する費用・時間・労力が増大し、これが貿易取引の発展の阻害要因の一つと考えられるに至りました。また、1960年代にはコンテナによるユニット・ロード・システムが導入され、1970年にはジャンボ機による航空貨物定期便が開始されるなど、国際貨物輸送に大きな変化が生じました。そこで、貿易関係手続きの簡素化、レイアウト・キーによる書類の統一化、記載事項の統一化およびコード化などが行われました。また、航空貨物やコンテナ貨物の迅速・正確な事務処理を行うために、主要国の税関ではコンピュータを導入して、輸出入通関手続の自動処理が行われるようになりました。

他方、コンテナ・ターミナルにおける荷役作業時間の短縮およびコンテナ船の高速化により、仕向地に貨物が到着しても、船荷証券の未着のために、荷受人はこれを受け戻すことができず、そのため、転売の商機を逸したり、追加使用の負担を余儀なくされる等の事態が発生しました。すなわち、船荷証券が十分に機能しなくなったのです。これを、一般に、船荷証券の危機と呼んでいます。そこで、従来の紙をベースとする書類に代えて、迅速・低廉・正確・安全な貿易取引の履行を実施する方法について種々研究が行われました。そして、最終的に、情報処理技術と電子通信技術を使用して、貿易取引に関する手続を電子化する方法が選択されるに至ったのです。

 

 

 

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