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はじめに 貿易手続の電子化の必要性

 

Q0:BOLEROや貿易金融EDIが報道されています。そもそも何故貿易手続を電子化する必要があるのですか。

国際商業会議所(ICC)の「インコタームズ」1には、工場渡条件(EXW)から持込渡(関税込み)条件(DDP)まで13種類の定型取引条件(Trade Terms)の売買当事者の権利・義務が規定されています。

しかし、わが国の輸出入貿易取引で使用されている定型取引条件に関する実態調査報告書によりますと、わが国では、圧倒的に、FOB条件とCIF条件が使用されており、新しい輸送形態に用いる定型取引条件(FOA条件、FCA条件、CPT条件、CIP条件等)は殆ど使用されていません。その理由として、「インコタームズ」が十分に普及されていないことが挙げられていますが、それだけが原因ではないようです。FOB慣習とCIF慣習は、150〜200年の伝統をもち、この間に各国の判例の積み重ねによって国際商慣習法としての確固たる基盤ができあがっています。したがって、貿易契約の当事者は、「インコタームズ」に拠らなくても、安心してCIF条件による物品売買契約を締結することができます。

CIF条件による物品売買契約(CIF契約)は、今日の典型的な貿易契約であるということができます。隔地取引形態の物品売買契約では、売買当事者は、通信手段を用いて契約を締結し、運送・保険・金融の3つの主要機関を使用して、物品引渡と代金支払を履行しますがCIF契約は、これらの機関のもつ機能を利用するために作られた取引慣習で、19世紀中葉に生成・発達したものです。

CIF契約の売主の主要義務は、指定仕向港まで物品を運送するために運送契約を締結し、約定期間内に物品を船積みして運賃を支払い、船荷証券を取得し、海上保険の手配を行い、保険料を支払って保険証券を取得し、船積書類(船荷証券、保険証券、インボイスその他)を買主に提供することです。一方、買主は、売主から提供された船積書類が契約に一致するときは、これを受領して、物品が指定仕向港に到着するか否かに関係なく、代金を支払う義務を負います。買主は、物品の船積後、海上運送中の物品の滅失・損傷の危険を負担しなければなりません。

 

1 国際商業会議所(ICC)の「インコタームズ」は、1936年に初版が刊行されましたが、その後、1950年に全面的に改訂され、1967年にDAF条件とDDP条が追加され、さらに1976年にFOA条件、1980年にFCA条件、DCP条件およびCIP条件が追加されました。1990年に、これまでの内容・体裁を一新して、電子メッセージと国際複合一貫輸送を考慮した13種類の定型取引条件を収録した「インコタームズ」が刊行されました。最新版は、「2000年インコタームズ」(ICC Publication No.560)で、2000年1月1日から施行されています。

 

 

 

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