はしがき
1. EDI制度手続簡易化特別委員会は、平成11年度の委員会活動として、貿易手続の流通性書類に関する調査研究に取り組んだ。課題の第1は、国連CEFACTの調査研究を中心に、UNCITRAL、ICC等の関係国際機関および主要国における貿易関係手続簡易化の動向をフォローすることであり、第2は、流通性書類等貿易金融EDI化に関する最近の動向に基づいて、本特別委員会が貿易金融EDI化実現のための技術的側面および法的側面からこれまでに行った調査研究を再検討し、電子商取引の実施を計画している貿易関連業界・企業を対象とする参考資料を作成することである。
2. 平成11年10月には、わが国においては、EDIFACTを採用した新システムとして、海上貨物通関情報処理システム(Sea-NACCS)および港湾EDIシステムの運用が開始された。本年は、電子署名・認証法案が通常国会に提出されるとのことである。また、このような法的環境整備の進捗状況と歩調を合わせて、政府、貿易関連業界、情報通信業界等が貿易金融EDI共通基盤システムの開発に取組んだ。今後、ボレロ計画、TEDI計画等の実証実験をふまえて、わが国では、EDIFACTを採用した貿易金融EDIシステムの開発・普及が一段と促進されるものと思われる。
そこで、前述のように、本特別委員会は、本年度の作業計画の一環として、技術的側面および法的側面から貿易手続のEDI化についてこれまでに蓄積した成果を最近の情報に基づいて再検討し、これをQ&A形式に纏めて、貿易関連業界の参考に資することのできるような報告書を作成することを決議した。
3. さて、日本の電子商取引の規模は、企業対消費者間取引では、1999年に3,360億円であったが、2004年には6兆6,200億円に増加し、他方、企業間取引では、1999年に12兆円であったものが、2003年には68兆円の規模になるとの調査報告が本年1月に発表されている。一方、1997年商業統計表によると、わが国の卸売業および小売業の年間販売額は、それぞれ480兆円と148兆円であったが、他方、同年における日本の輸出額と輸入額は、それぞれ約50兆円と40兆円であり、また、世界の貿易額(GIFベース)は、約660兆円であった。したがって、国内市場はもちろんのこと国際市場においても、電子商取引による手続の簡素化と利便性が確認されるならば、e-コマースが急速に拡大することは容易に予想される。