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そのときに日本は景気対策としてこれから減税するんだというふうに言ったところ、スウェーデンの大蔵省の役人は、何でそんなばかなことをやるんだと。不況のときには増税するんだということを言って、増税をして財政を再建しまして、現在では財政収支は2%の黒字です。そして日本は見るも無残に7.8%ぐらいの赤字になっているわけですね。では、失業率はどうだったのか。ヨーロッパ各国とも財政再建をしたために失業率を落としておりますけれども、スウェーデンは急速に失業率を改善いたしまして、8%あった失業率が現在4%に下がろうとしています。日本をもうじき抜きます。では、経済成長率はどうだったのかというと、経済成長率は3.5%にはね上がっておりますから、日本のようにうろうろしている場合ではないのですね。

では、スウェーデンは何をやったのかというと、スウェーデンは、経済成長を確保し、雇用を確保し、かつ社会的な正義、これを実現するには人材の育成しかないんだ、人的な能力を高めて生産性を向上させることによってすべてが解決するんだという立場に立ったんですね。したがって、徹底した情報教育をした。佐和先生がいつもおっしゃっているんですが、現在の不況は恐らく重化学工業の時代が終わって新しい産業構造ができ上がっていないための不況だと思います。例えばもうこれからの自動車というのは、単なる物じゃなくて、情報のオブラートでつつんでいく必要がある。いつも私はお願いしているんですけれども、私は網膜剥離でいつ失明するかわからないものですから、私が失明する前に目の見えない人でも運転できる自動車をつくってもらいたい。それをやれば、莫大な需要が見込まれるはずなんですね。お酒を飲んでも運転できますから。そういう新たな状況に対応するということが重要なので、徹底した情報教育を、学校教育だけじゃなくて、社会人教育としてもやりました。情報技術(IT)インフラ、しかも情報技術インフラだけではなくて、徹底した人材教育をやったということが一つですね。

もう一つはやはり環境なんですね。環境というのは技術革新と市場開拓の宝庫だ、こういうふうに位置づけて、戦略的規制じゃありませんけれども、環境で新しい技術が生まれてくるでしょう、そして環境関係で新しい産業が出てくるでしょう、そこに大きな市場が開拓されていくとして、環境を重視して経済を活性化したのです。つまり、むしろ環境を重視した政策を打つことによって景気は回復するのではないかと考えます。

 

 

 

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