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ヨーロッパの国々はそういう政策のシグナル効果を狙っています。ビジネスに対するシグナル効果でもありますし、消費者に対する効果でもあります。消費者教育の観点からも有効です。技術開発も進める効果があります。政策として重視すべき根幹はそこにありまして、そこに経済的に手法を織り込んでいくことはどなたも否定するところではなく、では具体的にどうなのだという話だと香川さんもおっしゃっているわけです。

今の香川さんのお話は私は非常に興味深くお聞きいたしましたけれども、決めたと、一安心だというのは困ります。競争の現場の方は痛感していると思いますが、特に自動車業界では一安心なんてことは当分ないだろう、一つが終わる前に次のことを考えなきゃいけない、そういう業界である。日本でもエネルギー消費量の4分の1は交通であって、その9割が自動車でありますし、まだまだ技術的可能性がとても高い。京都会議の前に削減は難しい、難しいと言っていましたけれども、2年前にはなかったハイブリッド車などもあっという間に技術開発されて、京都会議の前に市場に出されているわけですね。そういう意味で技術の可能性もとても高くて、やる気になればできる。では、どの部分の技術を開発するのか、資本を投入するのか、その方向性こそ問題なのだといえます。税で誘導しようというのは、業界としてはむしろ技術開発を進め、国際企業として日本の自動車業界が頑張っていくために本心では歓迎しているのではないかと思っていることが一つと、減税だけをやればいいではないかという意見は、自動車についてはやっぱり交通量を減らさないといけない。成り行きで車や交通料は増えるんだ、増える部分にどう対応するのかということではなくて、車の数も、利用の仕方も減らす、公共交通機関にアクセスしやすくするということです。私は京都に住んでいますが、歩ける町にする、自転車を使いやすい町にすることが必要だと思っています。このようなまちづくりを含めて、二酸化炭素削減だけではなくて、暮らしやすいまちづくりには、交通事故を起こすなどいろいろな意味での環境負荷を抱えている自動車利用がどんどん増えるのではなくて、むしろ小さくしていく方向性で議論がなされなければならない。減税するということで車をむしろ買いやすくする、乗りやすくする方向では解決しないと思うわけです。そこで、環境にいいということはないんですけれども、負荷の少ない車を増やし、そういう自動車を選択する人が環境について考えながら利用していく。これらを可能にするのが本来の政策だと思っています。

 

 

 

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