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先ほど申し上げたさまざまな環境対策の中で、やはり佐和先生がお話しになったソフトな対策、つまり私たちの行動原理を変えるための対策が必要で、もしもこのまま放置したらどうなるか。このまま環境が悪化していくと、いずれにっちもさっちもいかなくなると思います。世界を見ていますと、まさしく環境の崩壊によって国家が崩壊してしまった国が次々と出ています。このまま進んでいけば、究極的には今度はもっともっと政策的規制が入り込んできて、生活の隅々まであれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけないというようなきびしい規制が入り得る可能性があるわけです。それを回避するためにも、やはりこのような経済的な政策をフルに活用する意味があり、私はこのグリーン化という問題も、将来に対する大変大きな意味合いを持っているのではないかと考えておりますが、神野先生、この自動車関係諸税の性格と、税法上から見たグリーン化の意義についてお話をいただけますか。

 

○神野 まず最初に、議論を混乱させないためにちょっと私の考え方を述べておきたいと思います。いわゆる環境税というのと自動車関係税のグリーン化というのは若干違うと考えています。環境税の定義が非常に複雑で、広い意味での環境税という場合と狭い意味で環境税という場合があります。しかし、環境税とは環境が悪化するような物質を排出したり、あるいは物質のもとになるような、例えば炭素というようなものにかける税金と一般的に考えられると思います。しかし、自動車関係税のグリーン化はそれとはちょっと違うということですね。

 

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<神野 教授>

 

財政学の方では、税金ということを言う場合に三つの要素がないと税金と言いません。一つは強制性、つまり強制的に、もう一つは無償性、何の対価もなく、そして歳入を目的にしているということでないと租税と言わないんですね。

例えば、私たちが戸籍やなんかのサービスを受けに行くときには、個々のサービスの対価として、個別のサービスの対価としてお金を支払いますから、これは政府に支払っても手数料と言うわけですし、政府の体育館なんかを使った場合には、これは使用料と言うわけですね。このように個々の公共サービスの対価に対して支払ったものは租税とは言わないわけですね。それから、何の対価もなく無償で取り立てられても、交通違反の罰金のように収入を目的にしないものについては租税と言いません。

 

 

 

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