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しかも、この二酸化炭素の排出削減というのは、別に2年か3年先に削減せよと言われているんじゃなくて、10年先かけてやりなさいということですよね。このことは実は重要なんですよ。今現在道を走っている車で2010年に依然として走り続けている車というのはたかだか10%でしょうね。言いかえれば、10台のうち9台が新しい車に置きかわるわけですね。それも一斉に置きかわるんじゃなくて、向こう10年間の間に徐々に置きかわっていくわけですね。置きかえるといいますか、買いかえるわけですね。その買いかえるときに、少しでも燃費効率のいい車にそれが置きかわっていくということが積み重なれば、平均して燃費効率は20%改善する、あるいは30%改善するということは決して難しいことじゃないわけですね。そして、大した苦労もなくといいますか、何の痛みもなくその目標が、もっとも走行距離がふえるとかいうことがありますが、それはとりあえず置いておいて、走行距離が変わらないとすれば、30%燃費効率改善ということで例えば6%削減ということが自動車だけでできるわけですね。

じゃ、そういったことを促すためにはどうすればいいかということで、今政府は省エネルギー法というのを改正して、先ほど萩野さんの話にありましたように、平均して23%改善ということを自動車メーカーに対して義務づけたわけですね。私はそういう義務づけとか、あるいは何かを禁止するなんていうのは非常に野蛮な政策だと思うんですね。一言で言えば規制的措置なんですけれども、規制的措置は総じて言えば、政策として非常に野蛮でクルードなんですね。もっとスマートな政策があるじゃありませんか。それが実はこの税制のグリーン化に代表されるいわゆる経済的措置なんですね。先ほども申し上げましたように、日本は自由主義国家ですよね。したがって、例えば6000ccのベンツに乗ることを禁止するとか、自動車メーカーは3000cc以上の乗用車をつくることを禁止するとか、そんな野蛮な政策はとらない方がいい。そして、同じ効果が発揮できるような経済的措置があれば、それを優先させるべきであるというのが私の立場であります。

やや経済学的な説明を加えさせていただくと、よく消費者主権という言葉があるんですね。市場経済においては消費者が一番主権を持っているんだ、生産者が何かを押しつけるとかいうのではなく、あるいは政府が不必要な規制までして消費者の選択を狭めたりするのは愚かな政策である。そうではなく、消費者がやっぱり自分の好きなものを選ぶということが市場経済の原則なんですね。そして、生産者の側は消費者が欲しがるものをつくらなければいけない。

 

 

 

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