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このような背景のもとで、気候変動枠組条約がとりあえず枠組みだけで締結されまして、2000年以降の世界の国々の取り組みについて、京都会議で目標年と数値目標を決めて先進国から排出削減するという議論をしたことは皆様ご案内のとおりでございます。

また、まだご記憶のとおり、この京都会議に向けましても、日本は国内で、どのような数値目標をかかげることができるのかについて、政府部内や産業界との対立も大変厳しいものがありまして、京都会議直前まで日本の対応は決まりませんでしたが、国際交渉でも数値目標を決めるについては極めて難しいことでありました。京都会議の予定日を1日超えてようやく夜明けに何とか形ができたというものであったわけであります。

先進国内部の交渉も大変難しかったのですが、途上国と先進国との間でも極めて難しいものがありました。特に先進国の側から見ますと、これまで、大きいこと、多いことはいいことだと、GDPも増えるもので、そうでなければやっていけないと考えられてきたのに、逆に抑制を考えなければいけないという、大きな発想の転換を迫られていたのだと思います。それを法的拘束力のある、守らなければならない国際約束として合意をする、世界に削減を約束するということを迫られていたことも交渉を困難にしていたと思います。

そういう意味で、石先生が今おっしゃいましたように、後世から、京都議定書を採択したときが人類の1つの転換点であったと見られるのではないか、そうあることを期待したいと私は思っているのですけれども、今はまだそのことが怪しい状況にあるのも事実であります。

と申しますのも、先進国全体で90年の排出水準から5.2%下げる、そして日本は6%排出削減をする、こういう数値目標が2010年ごろまでの法的拘束力をもつ目標として定まってはいるわけでありますけれども、ご案内のとおり、例えば吸収源について、何を、どのようにカウントができるのかという点については、今のところ日本政府はまだ全く見通しがないと考えているようであります。ここで数値目標にげたを履こうとしている日本は3.7%もあてにしているわけでありますけれども、そのような現実性があるのかは大変難しいと思います。また、排出権取引とか共同実施、とりわけクリーン開発メカニズムという先進国と途上国とのプロジェクトによって途上国で排出削減する、あるいは吸収源をふやすということもできるようにしようではないかとしており、こうなりますと、決して地球全体で温室効果がゼロサムとかマイナスという話にはならなくて、途上国分のカウントの仕方によっては全体で大幅にふえてもいいという話になりかねない。計算の仕方やこの京都議定書の詳細設計の仕方によりましては、日本とかアメリカはひょっとしたら排出を増やせる国になるかもしれない、というふうなことを期待して交渉に臨んでいるところもまだまだあります。そういうことがこの2年たって、まだまだ京都議定書の発効に道筋が立っていない。

 

 

 

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