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−今後、自転車持ち込みが本格普及する可能性は。

光武 沿線地域に坂道が多いことを考慮すると、自動車利用から鉄道・自転車の組み合わせへの転換は非常に厳しいものだと思う。しかし、自動車利用には排気ガスによる大気汚染のほか、交通渋滞などのデメリットもあるので、自転車持ち込みは大変重要なことだと考えている。鉄道の利便性を高めることにより、できるだけ多くの人に鉄道を利用してもらうことは、CO2(二酸化炭素)排出量を減らし、地球温暖化を防止するための有効な手段になる。従来、鉄道の振興策は経営面を中心に考えていたが、今後はエコロジーの観点からも鉄道の重要性を沿線の自治体、住民に理解してもらえるよう、努力を重ねて行きたいと思う。

−自転車持ち込みを市民生活に浸透させるための課題は。

光武 まずは体験してもらうことだ。今回のモデル事業は、混雑を避けるため土日などの休日に限定して実施されたが、本来は通勤、通学の時間帯に自転車持ち込みを実施すべきだろう。そうすれば、自転車持ち込みによって生じる「意図せぬ効果」を実感してもらえる。

ボランティアなどもそうだが、はたからは大変そうに見えても、やっている本人は喜びを感じているという事例は多い。自転車持ち込みの場合でも、参加することによって違った角度からの効用を利用者に感じてもらえるのではないか。「自転車持ち込みでエネルギー消費の抑制に貢献した」と実感した人がいるとすれば、その人は日常生活でまた別の形で省エネを実行するなど、連鎖的なプラス効果を生み出せると思う。

−佐世保市の環境行政への取り組みについて。

光武 造船や炭鉱の町として発展してきた佐世保市は、昭和48年に環境保全条例を制定するなど、早くから体系的な公害行政を実施してきた。しかし近年は、自動車排ガスによる大気汚染や生活排水による水質汚濁などの都市型公害が顕著。そのため、平成元年12月に「地球環境保全・平和都市宣言」を行い、地球環境保全を視野に入れた取り組みを開始した。さらに、6年7月には「空き缶等の散乱防止および緑化の推進に関する条例」を施行、9年3月には環境基本計画を制定して、環境保全行政の統合的、計画的な推進を図っている。

−今後の課題は。

光武 5年4月から県内の他市町村に先駆けて、ごみの分別収集を実施し、市民、事業者に対してごみの排出抑制およびごみの減量化を働きかけてきた。しかし、ごみの発生量はいぜん増加傾向にあり、ダイオキシン汚染などの新しい問題も発生している。これらをどう解決していくかが将来の大きな課題だ。このため、ごみ減量および排出抑制の観点から、収集有料化の検討も行っている。

 

 

 

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