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(4) 光武顕・長崎県佐世保市長(松浦鉄道)

まず体験すれば「意図せぬ波及効果」が見えてくる

 

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−佐世保市の都市としての特徴は。

光武 佐世保市は、九州の西端部に位置する長崎県北部の中心都市であり、東シナ海に面しているため早くから造船業が発達した。また、大小様々な島々が海上に壮大なパノラマを織り成す九十九島や、テーマパーク「ハウステンボス」に程近い観光地としても知られている。

−松浦鉄道の概要とその役割は。

光武 松浦鉄道は、昭和63年4月に旧国鉄から経営を移管して、第3セクター鉄道として開業した。佐賀県有田町を起点として、佐世保まで総延長93・8キロメートルという大変長い距離を走っている。列車本数の増大や、駅数を32駅から57駅に積極的に増設するなどの経営努力により、93年度から6年連続で黒字を維持。今年度も黒字の見通しだ。

開業以来、現在に至るまで通勤、通学者を中心とした地域住民の足として定着している。ピークの平成8年度には乗客数は442万人に達し、それ以後は景気低迷などで減少傾向にあるが、これだけの地域住民を輸送していることは、公共交通機関として重要な役割を果たしている証拠であると認識している。

−沿線の人口や交通事情は。

光武 人口は緩やかな減少傾向にあり、特に長崎県側の市町村の減少傾向が強まっている。7年度に国土庁と共同で実施した松浦鉄道をモデルとする地域振興策でも、鉄道収益を支える通学利用者が将来的に急激な減少が予想されている。

沿線地域の交通機関は、松浦鉄道のほかにバスもあり、基本的に平行して運行している。この二つの輸送機関がそれぞれの特性を生かして相互に補完していけば、棲み分けも可能だ。13年度にはバス路線に関する競争制限的な規制が廃止されるので、バス事業との更なる競争激化も予想される。

−鉄道への自転車持ち込みについての評価は。

光武 自転車持ち込みは、地域振興のための具体的なアイデアとして、松浦鉄道の沿線自治体で意見を出し合った結果、実現したものだ。休日に自動車でなく、農村地帯などのさわやかな空気を自転車に乗って味わってもらおうと、99年3月から「サイクリング列車」として独自にスタートさせた。同年10月からは、交通エコロジー・モビリティー財団のモデル事業にも参加したわけだ。

自転車持ち込みの利用者はまだ少ないが、サイクリング愛好者などに積極的に働きかけ、快適さを体験してもらうことで、自転車持ち込みが定着するように取り組んで行きたいと思っている。

 

 

 

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