日本財団 図書館


−地球温暖化防止を目的にした自転車活用に対する評価は。

山崎 自転車は市民の足として定着しており、利用範囲を拡大するこうした試みは大変よいことだと思う。ただ、我が国では自転車利用に対する基盤整備がまだ不十分であり、都市部の自転車専用道の整備などが今後の課題になる。また、昨年11月の決算総会で「地下鉄への自転車持ち込みが都心部の放置自転車を増大させるのでは」という質問が出た。こうした議論を踏まえて、駐輪場の整備なども推進する必要があるだろう。

−車両への自転車持ち込みによって得られる波及効果は。

山崎 今回の自転車持ち込みはあくまで実験だが、欧州などではすでに日常化している。それだけに、我が国でも本格実施される可能性は十分あり、それにより様々な波及効果が期待できる。しかし、そのためには自転車を鉄道に持ち込みやすくするための投資や、他の乗客の不満を招かないような取り組みが必要になる。

我が国では、こういった場合に「公共責任」が強く求められるが、欧米のように「自己責任」を明確にする必要がある。たとえば、階段では自分で自転車を運び、車両内でも周囲の乗客に迷惑をかけないようにしっかりと自転車を固定するなど、モラルを含めて個人責任の範囲で実行すれば比較的容易に実施できるだろう。そうではなく、エレベーターや車両改造などの投資が必要だとなれば、早急な普及は難しいのではないか。中長期的には、自転車専用道路などのインフラ整備が必要であると考えている。

−地球環境問題についての基本的な考え方は。

山崎 今日の環境問題の多くは、私たちの通常の社会経済活動に起因しており、環境悪化の影響は地球全体や将来の世代にまで及ぶ。21世紀に向けて、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会への転換を進めて行くことが、今、私たちに求められている。それだけに、暮らしの基盤となる環境を守り、新たな世紀へ引き継いでいくために、一人ひとりができることを考え、実行して行くことが欠かせないと思っている。

−これまでの市の環境行政の歩みは。

山崎 4年5月に福岡市で「地球環境と地域行動」をテーマに「ローマ・クラブ福岡会議イン九州」が開催され、そこで「福岡宣言」が採択された。同宣言の趣旨を踏まえて、福岡市では「ふくおか環境元年宣言」を発表し、この理念を実現していくための行動計画を策定、環境にやさしい都市の実現に向けた取り組みを開始した。その後、環境の保全・創造への取り組みをより一層進めるため、8年に環境基本条例、9年に環境基本計画を相次ぎ策定したわけだ。そして、10年には環境保全に向けた市の率先実行計画を策定し、環境基本計画に掲げる環境像「ときを超えて人が環境とともに生きる町」の実現に向けて努力しているところだ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION