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一方では、日本の大都市では中心部の駐輪場不足と、これに伴う放置自転車の増加が問題になっており、鉄道への自転車持ち込みによって駐輪場不足などが一層深刻化するという懸念がある。都心の一等地は地価が高いため、新たな駐輪場を設けることは経済的に困難だが、地球温暖化防止を推進するためには駐輪場の建設は重要な課題である。今後、国と自治体が十分に議論し、公的遊休地(例えば駅の上部空間など)の活用などによる駐輪場整備を推進していくべきと考えられる。同時に市民も自転車の放置をやめるなど、交通モラルの確立を図るべきである。

(4) リーズナブルな持ち込み料金の設定と利用時間帯・区間の拡大

今回のモデル事業では4事業者とも持ち込み料金は無料としているが、自転車持ち込みを継続的に行うにはある程度の持ち込み料を設定し、事業者の負担を軽減することが妥当と考えられる。欧米でも持ち込み料金は別途払うケースが多い。アンケート調査の結果でも、自転車利用客は「現状のままでもある程度の金額は払う」「利用しやすくなれば見合った金額を払う」という回答が多い。利用客が自転車持ち込みによる利便性の享受を求めるならば、受益者負担の原則に則ってある程度の持ち込み料金を負担するのは当然のことと考えられる。

ただ、持ち込み料金は安ければ安いほどよいのが利用客の本音であろう。アンケートによると、現状のままで負担してもよい金額の上限は「100円まで」という答えが圧倒的に多かったが、これをそのまま事業者が受け止めるのは現実的ではない。実際に、持ち込み料金をどの程度の金額に設定するかは、事業者の今後の研究課題といえる。

また、今回のモデル事業は休日中心の実施だったため、アンケートでは「利用できる時間帯や区間が拡大すれば自転車持ち込みを利用したい」という声が多数寄せられた。平日は持ち込み利用客が極端に少なく、ラッシュ時間帯に自転車を持ち込むことはほとんど不可能であるのが現状だが、自転車持ち込みを定着させるにはラッシュ時を除いた全時間帯での実施が望ましいといえる。

(5) 事業者、利用客のインセンティブ導入

自転車持ち込みを安全かつ確実に実施することは鉄道事業者にとって経済的負担が大きく、単なる乗客サービスやボランティアとしては取り組みにくいのが実情である。そこで、何らかのインセンティブを設けて事業者の取り組み意欲を高めることが必要と思われる。具体的に考えられるのは、まず、自転車持ち込みを行っている事業者に対する補助金や優遇税制の適用である。低公害車に対する様々な優遇措置などが検討されている中で、自転車持ち込みに関する補助金や優遇税制の導入は、あながち実現不可能な課題とは思えない。地球環境問題の解決に向けた重要な施策の一つとして、補助金や優遇税制の導入を国会などの場で真剣に議論する必要がある。

 

 

 

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