自転車についても一般利用では自転車道の整備などハード面の問題であったり、通勤利用のレンタサイクルシステムも成功していることから、都心のレンタサイクルに絞って検討を進めていきたい。
4-2. 社会実験の推進
交通の分野のように技術的側面と実際の人々の行動によって状況が大きく変化する領域では、実際に将来計画を試行してみることは本格実施の際に失敗する危険性が相当回避され、実施の際の施策の精度が上がることが期待されるので非常に有効な方法である。
イベントとして社会啓蒙を目的として、目指すレベルから妥協して意義を社会啓蒙を目的に探りをれるような方法もあるだろう。しかし、正しい評価は得られず、技術的にもあまり意味がないものになりがちであることは認識しておかなければならない。事前の入念な準備なくただやってみるのでは、その後の本格的実施に否定的な意見を生むことになり、慎重に進める必要がある。実験だからといい、安易に試行することは危険である。
その点で、ラ・ロッシェルの電気自動車の導入のための用意周到な社会実験や、都市交通計画の一日であるが完全実施を行う「街では、車を使わない日」という国家的社会実験などは、現実の場で計画通りの試行をすることに意味があった。
実験の内容によって、社会実験の目的が異なるが以下の事柄が期待できる。
●社会実験の目的
・技術的な検証…社会実験の一番の狙いは、予測と実際の差、要因を確認することである。
・市場性の把握…実際の利用者や求められているニーズの把握など実際にデータとしてわかる。
・運営法の確認…プログラムを十分に練ってあるとしても実際の運営で問題があるか確認する。
・社会啓蒙…将来計画を市民に認知してもらい、考えを促す機会であり、広報技術の訓練としても重要。
・体験…通常と異なる交通行動の体験をし、また、評価の視点をもつことができる。
●事例から…ラ・ロッシェルにおける電気自動車導入検討のための社会実験
フランスの大西洋岸の商都ラ・ロッシェルは街の歴史的環境と観光地居住空間としての生活環境の保全のため都心部は電気自動車中心の都市を目指して都市政策が進められている。「街では、車を使わない日」のもととなった「車のない日」の試行を97年に先駆けて行った先進的交通社会実験都市といえる。
93年からほぼ2年間かけた電気自動車の利用実験がされた。この結果を受けて、政策を推進するとともに、第一歩として短時間レンタカーを95年から開始し、現在は99年9月22日の「街では、車を使わない日」にLISELECという個人利用の公共交通レンタカーシステムをスタートさせた。
最初は計画の目的等概要を広報し、電気自動車の利用をデモしたりする課程で、モニターを選別していった。関心を持つモニター希望者から様々な属性をもつ一般の利用者の立場30人と、組織で車の選定をできる立場の20人の計50人と決め、実際の車を利用する条件と同じ条件に近くするため、18ヶ月間のリースとした。モニターは月2万円程度のレンタル料とエネルギーの電気代を支払うというものである。