1-1 車の長短所を認識する
1) 車の魅力・有効性…日本人と車
多くの問題が指摘されながらもここまで普及し、経済活動の中心的な産業にまで育ててくるようになった車の魅力、利点を把握することから、環境に配慮した交通という観点で車の利用の減少、あるいは、車から他の交通手段に転換を誘導するために有効な方法を見いだせるだろう。
こうした車の優位性に価値を認めてこれまでは、経済活動の活性化、豊かな個人生活のために車を優先的に環境整備することを社会が手厚くサポートしてきた。
日本では、車の存在は単なる交通の道具にとどまらず、ステータスシンボルであったり、家の代替的な機能やゆとり部分を担ったりと、車に多くの期待をしていることに特徴がある。
○交通機関としてとびぬけた利便性
利用機会の自由性、door-to-doorの便利さ、個人所有の安心感
○交通機関としての優れた性能
速度、移動距離、荷物の運搬、安全性、4から8人収容
○最も大きな個人所有の道具
ステータスシンボル、消費意欲の対象、行動の可能性の拡大、空間価値(収納等)
○利便性・自由度に対する経済性
比較的安価なランニングコスト、拡散した土地利用では最低限の道路整備ですむ
2) 車あるいは車中心社会の課題
現在の車の利用における問題点を環境・エネルギー問題ばかりでなく、経済・社会、都市政策等の観点から、これまで示してきた内容と重複する部分もあるがまず指標として把握する。新しい車の使い方が必要な時期になっている。
○エネルギー消費
資源として限界のある化石燃料を効率的に使用しているわけではない。
○資源
10年ほどの寿命として廃棄される。リサイクル率もまだ低い。
○地球環境への影響(CO2等)
運輸交通分野での排出割合が多く、その中でも自家用車が主要な排出源となっている。
○公害(大気汚染、騒音等)
SO2、NOx、塵埃の問題。特にディーゼルエンジン等によるNOxは改善が迫られている。自動車による交通騒音は、年々増加している。
○交通渋滞
時間の浪費、公害、騒音等交通渋滞による社会的な経済ロスははかりしれない。
○交通事故
便利さの代償として車に事故は避けられない。
○都心の衰退・景観阻害
車依存の生活によって、密度が拡散し都心でも車優先で人主体の都市活動が阻害されている。ヒューマンスケールをこえたスケールのため景観面でも問題がある。
○都市空間の占有
走行空間ばかりでなく、使わない長時間の駐車のための大きなスペースが必要。
○公共交通の弱体化
効率的な公共交通の利用を減らし、利便性・サービスの問題を引き起こす。