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2) 都市レベル…都市と都市交通

1] 都市における運輸交通のエネルギー消費・空間占有

先に引用したOECD/ECMTのレポートでも、土地利用等都市のあり方と大きく関係し、連携のとれた一体的な観点で対処する必要性が示されている。

クルマ依存の都市生活にあわせ次第に都市の空間的膨張はとどめがなくなりつつある。都市計画は、周辺の農業用地に対して、最小限の都市の領域の拡大を調整することにあったが、産業革命以降、工業生産のため急速に都市人口は増大し、産業用地も拡大化され、都市活動を維持する土地は拡散を続けてきた。

そして、車依存傾向を深めるとともに、集積の高い都心部から周辺部、郊外へと都市活動も拡散させてきた。都市と農業用地の節度ある土地利用は都市計画の主題であるものの、日本でも同様の経過を経ている。さらに日本の都市計画制度は、スプロールに対し有効な手だてがなく、拡散し都心部の空洞化が生じている。クルマ依存の生活がこうした変化を促進している。

以下の表は都市密度と気化燃料の消費の関係を示したものであるが、都市密度が低い都市はクルマに依存する北米やオーストラリアなど比較的新しい都市で消費量が多い。次のグループは比較的消費が少なく人口密度も高めのヨーロッパ諸国がある。東京を始めアジアの先進国入りしている都市は消費量は少ないグループと顕著な傾向がみられる。気化燃料の消費と二酸化炭素排出量は相関しているので、この問題は、環境から都市と交通のあり方を考える上では重要な示唆を示している。とにかく、移動距離の短縮と頻度の減少に努めなければならないが、まずは都市の視点ではコンパクトな都市づくりが重要である。

●一人あたり燃料消費と人口密度 (「環境負荷の小さな都市と交通」より)

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(注)追加した山口市、徳島市、名古屋市、神戸市のデータは、1994年の家計調査年報によるものであり、各都市の平均世帯規模の値から1人当たりガソリン購入数量に変換した上で、ガソリン1リットル当たり8400kcal、1cal=4.184Jとして計算したものである。

追加した日本の都市のエネルギー消費量は、業務用を含んでいないのでこの点でかなり低めの値となっている可能性がある。一方、追加した日本の都市のエネルギー消費量は1994年の値であり、世界の都市は1980年の値である。この点では、追加した値は高めの値ということになる。

 

 

 

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