2. 環境に配慮した交通の領域と事例
2-1 環境に配慮した交通の諸レベル
これまでに示したデータだけでは十分な情報とは言い難い面もあるが、地球環境において運輸交通部門が及ぼしている影響は大きな比重を占めていることが示されている。こうした状況に危機感をもち、今日では京都会議での協約、あるいはEUにおける取り組みをはじめ、法律、税制、あるいは交通計画にとどまらず都市計画の手法の転換まで様々な試行が世界中でスタートしている。具体的に環境に負荷の少ない交通のあり方を目指し、様々な領域で試みられているこれらの例を整理してエコ交通を考えていきたい。
エコ交通を考えるにあたり、少し枠組みを大きくとらえ3つのレベルを設定した。
1] 生産物レベル
2] 交通レベル
3] 都市レベル
1) 生産物レベル
運輸交通は、交通機関、乗り物という物質がまず必要である。その生産という産業活動の部分で、なかでも自動車産業は建設関連産業にも匹敵する重要な位置にある。さらにはそれが移動あるいは停めるためのインフラストラクチャーが必要となる。陸上交通では、道路、鉄道、駐車場、運河等があり、海上交通では港湾、航路、それに空港がある。
また、都市の規模・密度、あるいは都市の空間的な形態、土地利用、施設配置など、さらには、道路やその他交通施設等も、交通を具体的に規定する物理的条件として存在している。
主要な問題は人口集中する都市にあり、そこで活発な都市活動が行われている。従って、エコ交通の中心となる場は都市交通にあると考えていきたい。
これを、まず交通を物質の生産、消費のサイクルの面では下図で示す構図でとらえられる。