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4章 わが国における接遇・介助教育の方向性

 

4-1 マニュアルに必要とされる基本項目の整理

 

これまで述べてきたことから、マニュアルの作成において必要とされる基本的な項目は以下のように整理することができる(表4-1-1)。

 

表4-1-1 マニュアルの策定において必要とされる基本的な項目

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基本として、高齢者・障害者を含む全ての利用者が、公平で同じようにサービスを受ける権利を持ち、交通事業者は公平で同じようにサービスを提供すべきであることを確認する。すなわち、尊厳を持って対応することは対人において最も基本的なことであり、高齢者・障害者に対する偏見や思い込みを減らすために重要な要素である。

このような理解の上にたって、接遇・介助に対する心がまえを持つことは接客面での良い効果をもたらすと考えられる。

また、高齢者・障害者の交通機関利用における身体的困難や心理的不安を理解することは基本的な接遇態度を形成し、よりニーズに合った介助を提供する上で必要である。

障害の種類については具体的な対応方法を示す必要がある点で、詳細に分類する必要がある。ここで分類した項目がマニュアルの骨格となる部分であり、介助の基本項目といえる。北米の調査では、わが国と比較して、より多くの障害の種類を想定して教育を実施していることが明らかになっている。

わが国でも今後、高齢者・障害者の外出が増加すると考えられ、現在の車いすの取り扱いや視覚障害、聴覚障害を中心としたマニュアルでは対応しきれなくなることが予測される。表4-1-2では、北米で既に対応している項目等、調査から明らかになった情報を参考に、今後対応が必要になると考えられる障害等の種類、特徴および使用される器具等を示した。様々な障害を理解することが接遇の第一歩であるとの認識から、網羅的に広範に記載したが、交通従事者がこれらすべてに高い水準で対応することを求めるものではない。実際のマニュアルの構成では、この表を参考に出現の度合いに応じて重点的に対応すべき障害の種類を抽出し優先度をつけて取り組む予定である。

また、図4-1-1では交通機関(主として鉄道やバス)の利用を想定し、目的地に至る路線の確認から降車までの場面を想定し、移動に制約のある利用者が直面する主なバリアを示している。状況に応じて、同図の右側に示したような困難を少しでも取り除くための接遇・介助が求められる。

 

 

 

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