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(2) センシティビティ・プログラムの特徴の整理

 

アメリカ、カナダにおけるセンシティビティ・プログラムの内容には以下の特徴がある。

 

1]構成内容

 

a. 法的な位置付けの理解

 

アメリカとカナダで共通しているのは、障害を理由にいかなる差別もしてはならないということと、交通従事者に対するトレーニングの実施が法律で位置づけられている点である。アメリカではプログラムの中にADAについての学習が取り入れられている。ADAによって何が変わり、交通事業者はどのような対応をしなければならないのかという点について学習する機会を設けているのが一般的である。

 

b. 障害を幅広く捉える

 

障害の種類ごとにどのような対応が必要かを解説する点はわが国と同じであるが、想定している障害の種類が多い。特にわが国ではまだ取り上げている事例の少ない内部障害、精神障害、知的障害、老人性痴呆などへの対応が明示されている。また、てんかんやエイズ、薬物乱用者等への対応に言及しているものもある。

 

c. 障害の理解、尊厳を持った接し方に重点を置いている

 

アメリカでは様々な障害の特性を理解するのと同時に、障害者に対して尊厳を持って接することが強調されている。ワシントンの事業者では鉄道、バス、パラトランジットのいずれの部門でも障害者に対する誤解を解き事実に基づいた理解をする教育が行われている。

 

d. スペシャル・トランスポート・サービスでは特に繊細な対応が求められている

 

全般として、鉄道やバスでは通常の乗客対応の研修に高齢者・障害者への接遇・介助に関する内容が取り入れられている。基本的な接客は通常の研修で十分対応できるものであり、高齢者・障害者への理解とリフトなどの機器の操作が主要な項目となっている。こうした取り組み方は基本的にわが国と同じと言える。

それに対して、パラトランジットなどの個別交通では安全運転と車いすの固定を中心とした安全対策に重点が置かれている。さらに、送迎の際の玄関先での対応や利用者の自宅近くの路上で降車してもらう場合などの配慮事項が取り入れられている。応用的な事項として、たとえば透析患者などが治療後に疲労してすぐに動けない場合があることから、一服させてから移動するなど日常業務から蓄積されたアシスト・テクニックと呼ばれるノウハウが取り入れられている。

 

 

 

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