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b. センシティビティ・プログラムの実施方法

 

カナダでは人権法により障害者に対していかなる差別も認められていない。従って、交通においても高齢者・障害者に対して一般の乗客と同じように利用することができる配慮が必要とされている。具体的な訓練の実施に関する規定は、「カナダ交通法」(Canada Transportation Act)に「身体障害者の介助を目的とした交通事業者の従業員トレーニング」に関する規則が位置づけられている。

ここでは、ドア・ツー・ドアの輸送手段である、ハンディ・ダート事業におけるセンシティビティ・プログラムの状況について述べる。ハンディ・ダート(handy DART)は1980年より運行を開始した高齢者・障害者のためのドア・ツー・ドア・サービスである。バンクーバー都市圏を9つの地区にわけて、トランズリンクからタクシー事業者、NPO等に委託して運営している。DARTはDial-a-Ride-Transportation(電話予約して利用する交通サービス)を意味する。

実際のサービス提供において専門知識として必要なのは、「この車いすは積めるか?」などの判断能力である。そのため、空車を利用しての実地訓練なども実施している。その他の対応は、一般に行っているカスタマーサービスの研修で対応している。

実施においては、いくつかの教材を用いてセンシティビティ・プログラムにとどまらず、運転における危険回避や、事故発生時の対処法等を含めた総合的な研修を行っている。基本的な教材は「ハンディ・ダート・ドライバー・トレーニング・リソース・キット」(図3-2-5左)である。バインダー形式で、主要単元ごとに短くモジュール分けされており、理解しながらステップアップする方式の教材である。この「キット」に基いて、さらに知識を深めるための副教材を利用する方式を採っている。たとえば、高齢者・障害者のためのスペシャル・トランスポートについて理解を深めるためには、別冊の「カスタム・トランジット・ドライバー・マニュアル」(ここでは高齢者・障害者向けのスペシャル・トランスポートをカスタム・トランジットと呼んでいる)を使用する(図3-2-5右)。

 

図3-2-5 使用される教材

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