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3章 海外の接遇・介助教育の現状

 

3-1 アメリカ、カナダにおけるセンシティビティ・プログラムの位置付け

 

この節ではアメリカとカナダにおけるセンシティビティ・プログラムの政策的な位置付けとセンシティビティ・プログラムの実施を支援する仕組みについて述べる。

(1)では政策的な位置付けとして、両国の政府レベル(運輸省)における取り組み状況を述べた。

(2)では支援の仕組みとして、調査・研究、情報支援、技術支援といった側面から重要な役割を担う組織について述べた。

センシティビティ・プログラムを実際に導入するのは交通事業者である。しかしアメリカではNPOが、センシティビティ・プログラムの作成、普及において重要な役割を担っている。調査、研究により得られたデータを交通事業者や利用者向けに活用できる形式に整理して提供し、トレーニングに限らず、交通のアクセシブル化全般においても啓蒙的な活動を行っている。一般的には独自財源、寄付および連邦補助を受け、様々な実践的活動を展開している。(2)では、このようなNPOの例として、アメリカの全国レベルの組織であるCTAA、Project ACTIONおよび地域レベルの組織であるMARTAおよび行政のリハビリテーション組織であるMRCの活動について述べた。

一方、カナダでは運輸省関連組織である交通開発センター(以下TDC)、交通事業監督局(以下CTA)について述べる。TDCは運輸省の外郭の研究機関で、技術開発、情報支援などの分野で様々な成果を挙げている。CTAは事業者のアクセシビリティ確保のための任意規則の策定や利用者と交通事業者間のアクセシビリティのトラブルを解決する役割を担っている。同時に事業者に対してセンシティビティ・プログラムによる教育が実施されているか査察する権限も持つ。これによりトレーニングが不十分な場合は改善命令等を出してセンシティビティ・プログラムの水準の向上に貢献している組織である。

 

(1) 政府レベルのセンシティビティ・プログラムの位置付け

 

1]アメリカ運輸省(U.S.Department of Transportation)

 

a. アクセシビリティ推進施策の概要

 

米国における政策的動きは1976年の運輸省規則により「連邦から補助を受ける交通事業者は高齢者・障害者の特別な交通ニーズに対して特別な努力(Special Effort)を払わなければならない」とした時点から急速に進展した。障害者の脱施設化、高齢者・障害者の雇用の確保を含めた地域社会への統合を目指すようになった。この結果、移動の必要性が生じ送迎がクローズアップされた。

続く1977年にはリハビリテーション法が施行され、その中のセクション504において「連邦から補助を受けるような組織は、障害者に対する差別をしてはならない」という理念が明確化された。しかし、その理念を保証していくには実際に多くの困難があった。

 

 

 

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