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3]効果的な情報発信

 

アメリカのNPO等の活動に見られるように、調査・研究成果の発表やニュース等さまざまな情報発信が積極的に行なわれている。CTAAやプロジェクト・アクションの活動は、交通事業者や障害者のコミュニティだけを対象とするのではなく、広く一般市民にも啓蒙的な活動を行っており、これにより市民意識の醸成が図られている。報告書の発行やニューズレターの発行をはじめ、インターネットを積極的に活用した情報発信、相談窓口の開設など、双方向的なコミュニケーションの土台が築かれている。調査・研究の成果の公開は、交通の円滑化に関する市民や交通事業者の意識を高めるためにも重要な取り組みである。わが国でも、今後は多様なメディアを活用し、情報公開を効果的に進める必要がある。

 

4]交通NPOの組織・人材開発の研究

 

わが国では交通のアクセシブル化に大きな力を持つ、NPOや研究機関が十分に育っていない状況がある。交通の円滑化を促進するには公と民をつなぐNPOなどの組織の強化が必要である。海外調査で示されたような、事業を担うことのできる強力な組織の必要性が高まっており、そうした組織の在り方、組織を担う人材等についての研究と組織を創出するための環境整備の必要性が高い。

 

(3) 社会へのアピールの必要性

 

全体を通じて、NPOや交通事業者においてアクセシビリティ対策に関する情報提供がこまめに行われていることが明らかになっている。特に交通事業者による情報提供は、利用ガイド、路線図、アクセシビリティ対策を中心にまとめたガイドブックが、調査を行ったどの事業者でも用意されており利用者の利便性を高めている。また、アメリカではADAの規定により、情報提供が点字、大文字、カセットテープ、フロッピーディスク、多言語で提供されるなど、情報を得る機会の公平が図られている。こうした情報提供は、障害者や高齢者のみならず、多くの乗客に対してサービスの水準をアピールする効果があると考えられる。日常的な広報活動は、事業者の姿勢を示す重要な機会であり重点的に取り組む必要がある。

 

5-2 本調査の課題

 

本調査の課題として特に重要な点を以下に示した。

今回の北米の調査では、都市の交通システムを事例として、アクセシビリティ対策の実態調査を行っている。しかし、実際にはアメリカ、カナダではその広大な国土のために、公共交通がカバーできない地域が多く存在している。特に地方における移動手段の確保については重要な課題であり、そうした地域のモビリティの問題も認識されている。例えば、CTAAのように人口の少ない小都市におけるコミュニティ・トランスポーテーションの普及活動、マサチューセッツ州のMARTAのような地方交通事業者が集合したNPOの活動などが実際に取り組まれており、人口の少ない地域における移動の問題に実践的な取り組みが行われている。

 

 

 

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