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通院費補助は基本的な医療にかかるための費用の一部として、移動について補助が出される制度である。利用資格は複雑なので言及しないが、通院のためのタクシー費補助、車の取得、維持に関する費用、その他の手段を利用する場合の手当て等が支給される。

 

・VIAレールにおけるアクセシビリティ対策

 

VIAレールセントラル駅を視察した。カナダ大陸横断鉄道として栄えていたが現在は都市間鉄道として少ない車両編成で細々と運行している。ホームが低く、車いすに対応している車両がないため、乗車時にはホーム上を移動できる手動リフト(アメリカでも同様のものを使用)で持上げて対応している。

駅への入り口、切符販売カウンター、インフォメーションセンターは車いす使用者でも十分に使用できた。情報表示文字、ビクトグラムも整備されていた。

駅のすぐ横には都市間バスセンターがあり、グレイハウンドとパシフィックコーチラインズの2社が乗り入れている。両社とも車両の車いす対応はできていない。ただし、荷物の多い乗客がカートを押す環境は整っていた。アクセシブル化については、今後、都市間バスのコード・オブ・プラクティス(Code of Practice)により次第に進められると考えられる。

 

d. 参考:トロントのドア・ツー・ドア・サービス

 

バンクーバーにおけるドア・ツー・ドアサービスと同様に、東海岸のトロントでも優れたサービスが実施されている。今回は都合により東海岸の調査を行っていないが、車両や運行方法で優れていることから、参考のために既存調査(詳細は財団法人運輸政策研究機構『第3回北米福祉交通調査団報告書』参照)からの情報をもとに述べることにする。なお、データは1998年11月の調査時点のものである。

トロントにおけるドア・ツー・ドアサービスは「ホイール・トランス」と呼ばれている。障害者が利用資格を得て予約をして利用するドア・ツー・ドア・サービスであるが固定路線型のサービスも実施されている。また、軽度の障害の場合はタクシー会社に委託したタクシーサービスを利用する。タクシーサービスはワゴン車とセダン車が用意されており、コストの低減を図ることを目的としている。ホイール・トランスとタクシーサービスの実施比率はおよそ4:6となっている。トロント都市圏の244平方マイル、人口約220万人の地域を227台の車両でカバーしている。利用登録者はおよそ14,000人である。表3-4-10にサービスの概要をまとめた。

ホイール・トランスは車両に特徴があり、オンタリオ・バス・インダストリーが開発した「オリオン」という車両を使用している。低床の車両で、横からでも後部からでもスロープにより車いすで乗車できる。車高はニーリング機構により12センチ程度まで下げることができる。車内は4台の車いすと6人の介助者が同乗できる。この車両は主としてドア・ツー・ドアサービスに使用され、固定路線にはやや大型の別の車両が使われる。ただし、車両コストが1台およそ2,500万円と高額であり、わが国の大型バスに匹敵する値段である。

 

 

 

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