他に、トランズリンクとは関係なく、ハンディ・ダートと類似したサービスを実施しているボランティア等の組織がいくつかある。こうした組織はたいてい、かなり狭い領域の特定のサービスを、特定の障害者に提供している。例えば、がん協会(the Cancer Society)では、がん患者だけを自宅から治療施設まで送迎するといったサービスを行っている。がん患者の中にも、身体的な障害を持つ人がいるが、そうした人たちが買物や仕事に行くための交通は提供していない。
b. タクシー・セーバー(Taxi Saver Program)
タクシー・セーバーは増大するハンディ・ダートの需要とコストの平準化および低減を図るためのタクシーを利用したプログラムである。前述の通り、ハンディ・ダートのキャパシティは限界に近づきつつある。通院目的など決まった日時に利用が集中することが多く、特定の時間帯は特にサービスのキャパシティが厳しい状況にある。
こうした状況を改善するためにタクシー・セーバーの制度を創設し、一般のタクシーへの乗り換えを促進してきた。1991年から開始されたもので、1冊80ドル相当のクーポンを半額の40ドルで利用者に販売する(利用は1ヶ月にクーポン2冊まで)。アクセシブルなタクシー(写真147、148)に対して、利用料の半額補助を出して、タクシー利用が可能なハンディ・ダート利用者をタクシーに振り向ける意図がある。タクシー・セーバーのクーポンを購入してタクシーを利用するには、ハンディ・ダートの利用資格が必要である。
現在、プログラムに加盟しているのは20社(車両数は合わせて99台)である。タクシーは予約せずに、呼べばすぐ来るという特性から、必ずしもハンディ・ダートを利用しなくてもよい利用者には重宝である。利用割合の変化は、タクシー・セーバーが20%の伸びに対し、ハンディ・ダートは3%のゆるやかな伸びに落ち着いている。
コストの面ではハンディ・ダートは1回あたり17ドルかかる。利用者1人当たりのコストで見た場合、5回ハンディ・ダートを利用すると仮定すればコストは85ドルである。一方でタクシーセーバーの補助は1ヶ月で最大80ドルであるから、利用回数により差はあるにしても、コストの低減を実現しているといえる。トランズリンクとしては、バスを中心とした公共交通のアクセシブル対策が完備されていれば、さらにコストは下げられるという認識である。
c. その他の対策
・高齢者・障害者へのバス乗車券および通院費補助制度
BC州では、高齢者・障害者へのバス乗車券、および通院費補助の制度がある。
バスの乗車券は、低所得者、障害者等がコミュニティに参加することを支援する目的で交付するもので、BC州内で使用できるバスの乗車券に補助金を交付する制度である。この乗車券を利用するには、障害年金受給者など、条件が必要である。利用資格者は1年間有効の乗車券を45ドル(1994年1月1日時点)で購入する事ができる。