これまで、州内の交通はBC Transitが統一して運営していた。しかし、GVRDのエリアについてはBC Transitから分離して、交通に限らず都市の成長管理をも含めた業務に責任を負う組織の必要性が認識され、トランズリンクが発足した。なお、GVRD以外の地域の交通は従来通りBC Transitが担っている。
トランズリンクの設置は、1999年4月1日に州法に基づいて行われた。設置の準備は1997年から2年にわたって進められた。設置に至るまで、GVRDは州政府への提言を発表するなどのはたらきかけを行ってきた。GVRDが96年に提言を行った内容は以下の4点である :
・財政は安定し、予測可能(予算化)なもので、適切であること
・公共交通は地域レベルでの細かいコントロールが必要で、より多くのバスや鉄道が必要である
・道路は連携したシステムが必要である
・TDMの推進
2]事業概要
トランズリンクの目的および事業内容は、交通事業体という枠組みを超えて幅広い。バンクーバー都市圏の将来的な人口増加への対応を主軸として、交通網の整備や環境対策など、都市計画的な視点を盛り込んで総合的な都市政策を推進している。組織規模は、本部スタッフがおよそ150名、ドライバーや駅務員等の現業従事者がおよそ4,000名である。ただし、実際の交通機関の運営は契約ベースで行われる。例えば、スカイトレイン(Sky Train)の場合、スカイトレインを運行する会社が別に有り、トランズリンクが運行を委託する形をとっている。委託契約により運行される交通機関の一覧を表3-4-1に示した。
トランズリンクの基本的な目的は、GVRDの政策にもとづいている。GVRDの都市に関する総合的成長管理計画は「大気汚染対策」「土地利用管理」「交通計画」の3本柱である。都市圏の具体的な目標は表3-4-2に示す4点である。トランズリンクはこうしたGVRDの政策に沿って、交通を主軸とした具体的な業務を実施する。特に、人口の増加を念頭に置き、環境的な配慮から、自動車交通の抑制と併行した公共交通網の整備に力が注がれている。現在のバンクーバー都市圏の公共交通の分担率はおよそ13%であるが、2021年までにこれを18%に引き上げる目標を掲げている。表3-4-3にトランズリンクの都市政策に関する主要項目等を整理した。
バンクーバーの開発が急速に進んだのは1960年代からである。気候温暖な平野部は西側ではバンクーバー周辺にしか残っていないため、計画的な開発が必要となってきている。今後の都市圏の拡大に伴いその形成軸は谷沿いの限られた方向になる。