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3-4 バンクーバー

 

(1) この節の概要

 

この節では、バンクーバー都市圏の交通システムについて述べる。バンクーバー都市圏はバンクーバー市を中心として形成された都市圏で、その交通事業体としてトランズリンクが設立された。設立以前は、ブリティッシュ・コロンビア州全体をBC Transitが統轄していたが、バンクーバー都市圏は州の管轄から独立し、1999年4月のトランズリンク設立に至っている。トランズリンクは交通事業にとどまらず、都市の成長管理を含めた総合的な事業体として位置づけられ、今後の都市政策の在り方の一つの事例として非常に重要である。こうした取り組みは既にアメリカなどでは見られるが、カナダにおいてはトロント都市圏以外では新しい動きである。北米の大都市における都市と交通の将来的な方向性を理解するため、その組織概要について言及する。さらに、従来から交通事業を行っていたBC Transitのトランズリンクの設立に伴う役割の変化についても述べている。また、トランズリンクが提供している交通サービスについて、モードごとにその概要とアクセシビリティ確保の実態、補助制度等について述べる。

 

(2) バンクーバーの都市情報

 

バンクーバー市はカナダ西海岸のブリティッシュ・コロンビア州(以下BC州)最大の都市である。BC州の州都は南へ下がったビクトリアで、アメリカとの国境に接している。

バンクーバー市の人口はおよそ50万人で、周辺の21市町村を合わせたバンクーバー都市圏(以下GVRD: Greater Vancouver Regional District)は、総面積約1,250km2、人口はおよそ190万人である。BC州の人口は全体でおよそ380万人(1995年)なので、人口の半分以上がバンクーバー都市圏に集中していることになる。

移民を多く受け入れていることも影響して人口の増加が著しく、都市部を中心にこの20年間でおよそ2倍に増加している(前出表3-1-1参照)。

 

(3) バンクーバー都市圏交通事業体(Trans Link)の組織概要

 

1]設立経緯

 

トランズリンクは、バンクーバー都市圏交通局(以下GVTA: Greater Vancouver Transportation Authority)がGVRDの交通事業を行うために用いる名称である。本部はバンクーバー市に隣接したバーナビー市にある。

 

 

 

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