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前述のように、財政上および制度上の制約が存在する下では、タクシー事業者がコストの高いアクセシブルな車両を導入することは期待できない。この問題を緩和するためにオンタリオ州では、1988年2月、アクセシブルな車両の導入を促進させるプログラムを発表した。内容は、タクシー事業者がアクセシブルな車両を発注する際に、1車両あたり1万ドルを上限とした補助を行うものである。このプログラムはすでに打ち切られたが、約150台に対し資金提供を行った。他の州でも類似したプログラムが導入されている。表3-3-10では、インセンティブ・プログラムに必要な条件を行政のレベルで区分して整理した。

 

d. アクセシブルな車両の規格

 

1984年にカナダ標準化機構(CSA)が、「身体障害者輸送のための自動車車両に関する国家規格」(CSA-D409)の初版を発表した。以来、D409は数回改訂され、現在はアクセシブルな車両全般に関してCAN/CSA-D409-92として発表されている。現在までにD409を採用しているのはオンタリオ州のみであるが、部分的には他の州でも採用されている。

 

e. アクセシブルな車両の開発

 

従来の標準サイズの車両を用いたタクシーは、車いす(タクシーのトランクで運ぶことのできる)から自動車の座席に移ることができる人ならば利用可能であった。しかし、乗用車の小型化に伴い、このような利用が困難になった。また、電動車いす、あるいは電動三輪に依存している人は依然としてタクシーが利用できない状況に置かれている。また、自走式車いすでも、車両への移乗時に危険な場合がある。スロープを付加する方法もあるが、時間がかかるため、より効率的でアクセシブルな車両の必要性が高まっている。

 

図3-3-2 特注のアクセシブルなタクシーのプロトタイプ(GSMタクシー社)

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1970年代の終わりから交通開発センター(TDC)は障害者を輸送するのに適切な車両の研究を支援している。この研究成果の例として、モントリオールのGSMタクシー社(GSM Taxi Ltd.)によるプロトタイプのアクセシブル車両の開発が挙げられる(図3-3-2)。開発には、連邦政府およびケベック州政府からの財政支援が行われた。

 

 

 

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