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2-4 ボストン

 

(1) この節の概要

 

ボストンでは、ボストン市および周辺の都市域を管轄する事業体であるマサチューセッツ湾岸交通事業体(MBTA)のアクセシビリティ対策について述べる。地下鉄、通勤鉄道、トロリー、ライトレール、フェリー、バス、パラトランジットの公共交通モードを提供している。

地下鉄、通勤鉄道、バスが主要なシステムである。地下鉄は3路線、53駅で運行しており、およそ68%(36駅)の駅でエレベーターが設置され、車いすでの利用が可能になっている。また、ライトレールのグリーンラインは低床車両が導入される予定である。ライトレールやトロリーでは、ホームが低く、既存の車両の乗降には3段のステップがある。そのため、駅には手動式のリフトや、一部ではホーム上にスロープを設置し車両にブリッジプレートを渡して乗車する方式を取り入れている。

通勤鉄道はほとんどの駅でアクセシブルになっており、改善工事も進められている。

バスは、全車両のほぼ9割がニーリングバスである。また、リフト付バスも増やしている。しかし、全ての路線でいつでもリフト車が利用できる状況ではないことから、前日に乗車通告を受け、確実にリフト車を配車するサービスで対応している。

パラトランジットは、MBTAが運行を委託する事業者のGLSS(グリス)社の、ADAに対応したパラトランジット・プログラムの実施状況をまとめている。MBTAではADA以前からパラトランジットを運行しているが、ADA以後、需要が大きく伸びて対応しきれない状況が生じている。また、最近では歩行可能なパラトランジット利用者も増えているため、セダン車両を導入してプログラムを実施している状況を述べている。

また、MBTA管轄地域以外の郊外部の交通事業体の集合であるRTA(Regional Transit Authorities)の現況について述べる。なお、マサチューセッツ州内のRTAをまとめた組織であるMARTAの活動を2-2(7)において述べている。

 

(2) ボストンの都市情報

 

マサチューセッツ州は全米でも都市化の進んだ州の一つである。人口は6,074,000人、面積は7,935平方マイルである。中心部であるボストンのコモンウェルス地区は全国的な水準のおよそ10倍の人口密度である(765人/mile2≒2.98人/ha、全国は74人/mile2)。市の人口はおよそ56万人(1996年)で、都市部(ボストンおよびその近郊)に約87%の人口が集中している。ボストンはコンパクトな都市で周辺の都市域と密接に連担していることから、以下ではマサチューセッツ州の都市部を中心に見たデータをもとに公共交通の状況を整理した。

州内の就業者297万人のうちおよそ7割以上が自動車の単独利用による通勤で、全国データとほぼ同水準となっている。同時に、都心部では徒歩や地下鉄利用率は全国より高く、コンパクトかつ公共交通が比較的整備されている状況にある。タクシーを除く公共交通の利用率は8.2%である(表2-4-1)。

 

 

 

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