日本財団 図書館


d. 運賃割引等の制度

 

運賃の割引制度に関しては、65歳以上の高齢者および認定された障害者には割引運賃が適用される制度がある。運賃の割引を受けるには、地域の公共交通協会が発行するカード、メディケアカード、運転免許証または州内の他の公共交通事業者が発行するいずれかのIDが必要である。障害者用には「レッドカード」、高齢者用には「グリーンカード」という名称のチケットが4ドルで発券される。実際に使用できる金額は16ドルであり、割引率は75%である。

 

5]その他

 

a. ランプタクシー

 

ここではサンフランシスコ市内の民間のタクシー会社が運行する、車いすで乗車可能なランプタクシーの事例について述べる。ランプタクシーを運行するイエローキャブ(Yellow Cab)社は、普通車を400台所有しており、そのうちスロープ板がついて車いすのまま乗車できるランプタクシーは30台である。

サンフランシスコにおけるランプタクシーの運行開始は1994年で、MUNIが電話で呼び出す方式のパラトランジットサービスとして試験的に導入したのが始まりである。当初は8台が導入され、うち半分は州政府の補助金、残りはタクシー会社の負担であった。公的資金で購入された車両は入札によりタクシー会社に貸し出された。こうしてランプタクシーが普及し始め、タクシー事業者はランプタクシーの組合を組織するに至った。現在は各社で車両購入し徐々に台数が増えているが、当初は公的な導入が先行したため市として警察当局などとの協議のもと以下の規定を設けいている。まず、ランプタクシーを運行する事業者は、車いすでの利用を優先すること。次に、パラトランジット・プログラムに参加すること。そして、車いす固定などの特別な従業員訓練を実施することである。

ランプタクシーの車両はクライスラーのミニバンを使用している。イエローキャブ社の他にもタウンタクシー社などがこの車両を使用して、車いすでの乗車に対応している。車いす使用者のほとんどが予約による利用であり、流しでの車いす乗車はまれである。通常は1日2から3件の車いす利用がある(ドライバー談)。車いす1台だけならば、ドライバーの他5人が乗車可能である(計7人)。なお、車両の仕様はMUNIとサンフランシスコのパラトランジット調整評議会(PCC)が作成したものである。パラトランジット調整評議会は高齢者・障害者などの団体、市の社会サービス局、パラトランジット事業者などで構成されている。

乗降はスライドドアから行う。内部に格納された二つ折りの手動式スロープを展開する(写真20)。車いすの固定場所は前部右が1台目、中部左が2台目である。ベルト金具を使用して4点で固定する(写真23、24)。

前述のように、ランプタクシーの乗務員は通常の乗務員ライセンスの他に、車いすの固定などを修得するため「センシティビティ教育」を受ける必要がある。これは交通従事者にとって高齢者・障害者への理解等を含んだ接遇および介助方法について学ぶトレーニングである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION