これまで、22の地域が選ばれて、5,000万ドル程度の補助金が支出されている(1997年〜)。このプログラムは単に公共交通だけを見るのではなく、歩道や街灯も含めたアメニティを包括的に追求するものである。交付される連邦資金は地域社会が使途を決めることができる。交通の中心(道路、鉄道、バスの集まる所)に職業訓練所、託児所などをつくった事例もある。
ISTEAを引き継いだTEA21は道路関連予算を公共交通に使うことができるようになったものであり、歩行者空間、サイクリングロードなどもその対象になる。このプロジェクトでは、様々な施設を総合的に結びつけることにより、施設に入所しないで済むような地域づくりが可能になる。プロジェクトは200件が動いていると述べたが、200都市に配分されているわけではなく、複数のコミュニティが含まれている都市もあり、やはり大都市が中心の整備になっている。
人口の少ない都市では、パイプラインプロジェクトという名称で順番待ち名簿(waiting list)に載るので、可能性が無くなるわけではない。議員などの働きかけによって順位が浮上することもある。
(7) NPO系組織の役割
ここでは全国規模で活動を展開するNPO系の組織について述べる。こうした組織は交通のアクセシブル化促進に大きな役割を負っていると同時に、その活動内容は多岐にわたっている。調査、研究、開発、普及、啓蒙など利用者、交通事業者、行政を含め、広く交通に関わる主体の参加によりプロジェクトを展開している。その活動内容、運営方法、財源、課題等を把握することは、今後のわが国の交通のアクセシビリティ確保においても、新たな関与主体の創設という観点から極めて重要である。
以下では、CTAA(Community Transport Association of America)、Project ACTIONおよび全国規模の組織との対比として、地方のNPO組織であるマサチューセッツ州のMARTAについて概要をまとめた。
1]アメリカ・コミュニティ・トランスポーテーション協会(CTAA)
a. 設立の経緯および目的
米国コミュニティ・トランスポーテーション協会(以下CTAA: Community Transportation Association of America)は、すべての人々のモビリティを向上させるための全国レベルの協会である。1974年に設立し、特に、過疎地域や小都市において、また、既存の公共交通にアクセスできない地域の高齢者・障害者もしくは困窮する人々のために、交通機関を改良することを目的としている。活動内容を具体的に述べるが、あらかじめ活動の概略図を以下に示す(図2-2-4)。