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1章 調査の目的

 

1-1 調査の目的

 

わが国では、2000年の高齢化率が17.2%で人口のおよそ6人に1人が65歳以上の高齢者である(厚生省平成9年推計値)。さらに2015年には、4人に1人が高齢者になると予測されており(同推計値)、わが国の高齢化は急速に進んでいる。また、身体障害児・者、知的障害児・者および精神障害者は、全国で約570万人である(『障害者白書』平成11年版)。

こうしたなか、高齢者・障害者をはじめとする、いわゆる移動制約者とされる人々が、自立した生活を送り、社会参加を可能にすることが重要である。そのためには安全、かつ身体的負担の少ない移動手段が確保された社会基盤を整備することが緊急の課題となっている。

しかしながら、昨今のわが国の状況を見ると、東京・大阪などの大都市では、地上・地下に様々な交通システムが重なり複雑化している一方、地方都市では自家用車の普及が一層進み、バス・鉄道等の公共交通の縮小化が進んでいる。このため、自ら移動手段を持たない高齢者・障害者等の円滑な移動を実現するという点では必ずしも充分な整備が進展しているとは言い難い。

交通エコロジー・モビリティー財団では、このような背景を受けて1998年より、欧米主要都市において高齢者・障害者の移動の円滑化のために交通の分野でどのような対策が取られているのか現状を調査し、わが国における移動支援のあり方を展望する調査を開始した。

昨年(1998年度)はヨーロッパの先進事例として、フランス、ドイツの主要都市において高齢者・障害者等の交通に関してどのような対策が取られているのか現状の調査を行った。さらに、わが国における移動支援の在り方を展望する調査の結果と合わせて、報告書としてまとめた。本調査は、ひきつづき欧米主要都市における移動制約者への対策を把握する2年目の調査である。調査対象として、昨年とりあげなかった、北米(アメリカ、カナダ)の事例を中心に現地調査を行い、報告書としてまとめたものである。

 

1-2 本年度調査の位置付け

 

この調査は3ヶ年にわたって予定している「欧米主要国における高齢者・障害者の移動の円滑化に関する総合調査」の2年目の調査である。初年度は、前述したようにヨーロッパの先進事例として、フランス、ドイツの主要都市を調査した。今年度は、北米を対象にしている。さらに来年度は、欧米諸国の中から調査対象地を選定し、同様に報告書をまとめ、最終的には3ヶ年の調査のダイジェストを作成する予定である(図1-2-1)。

アメリカ、カナダはこれまでにも優れた交通システムの紹介が多数行われている。今回は、そうした基盤整備を実現するための基礎となる法制度や、それを推進する仕組みについて、できるだけの情報を収集し、整理することに重点を置いている。したがって、本書においては、知り得た限りではあるが、調査国の政策的な取り組みの整理を試みた。

 

 

 

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