交通事業監督局(CTA)は、主として2つの役割を持つ。ひとつは交通のアクセシビリティ推進のための規則を制定する役割である。もうひとつは、消費者と交通事業者間のアクセシビリティに関するトラブルを解決する交通裁判所としての役割である。
CTAが制定する規則は、交通事業者のアクセシビリティに関する任意規定である「コード・オブ・プラクティス」である。同規則はアクセシブルな交通のための、より具体的で統一的なガイドラインとして位置づけられ、CTAの原案作成、運輸省の監修、利用者の代表や交通業界の代表が加わる諮問委員会の設置により策定される。
さらに、CTAでは利用者からのアクセシビリティに関する問題の訴えについて、交通事業者と利用者の間の調停を行っている。利用者と交通事業者間でトラブルが解決しない場合、図Bに示すように両者間に介入し解決を図るが、本報告書ではその処理の流れについて明らかにした。
その他の組織として、カナダ・バス協会、カナダ都市公共交通協会、カナダ交通協会、カナダ航空輸送協会、カナダ・フェリー運航事業者協会、カナダ自動車協会のアクセシビリティに関する取り組み概況を述べた。
・カナダの交通事業者の取り組み
3-3では、『Making Transportation Accessible』(カナダ交通開発センター編)から、主要な交通モードである都市の鉄道、バス、個別交通(アクセシブルなタクシー)についてのアクセシビリティ対策の経緯と現状を引用している。同書は1998年に刊行され、カナダにおけるアクセシビリティ対策を包括的、かつ詳細に論じている。交通におけるアクセシビリティ対策を理解するために非常に有用であることから、上記3つの交通手段について、主な内容を要約して述べた。
<バンクーバー>
3-4ではバンクーバー都市圏の交通事業体であるトランズリンクについて論じた。バンクーバー都市圏はバンクーバー市を中心として形成された都市圏(Greater Vancouver Regional District)で、その交通事業体としてバンクーバー都市圏交通局(Greater Vancouver Transit Authority)が設置されている。その事業体の愛称がトランズリンクであり、1999年4月より、都市圏の交通事業を担っている。トランズリンクは交通事業にとどまらず、都市の成長管理を含めた総合的な事業体として位置づけられている。こうした事業体は既にアメリカなどで見られるが、カナダではトロントを除いて、新しい動きである。