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アムトラック(Amtrak)は、全米をネットワークする都市間鉄道である。本部をワシントンにおき、Amtrak Accessというオフィスを設けて、障害を持つ人を始めとする利用者とのコミュニケーションにも様々なかたちで取り組んでいる。現在、主要駅については「キーステーション」コンセプトによりアクセシブル化することになっている。しかし、予算の制約や歴史的建造物の保存などの点で、大規模な駅舎改修は難しい状況がある。車両については、今後導入する新型車両はすべてアクセシブル化することになっている。乗降についての対策では、プラットホームがある場合は、ブリッジプレートと言う渡板をホームと車両の間に渡して、車いす等のアクセスを確保している。プラットホームがない場合は、移動式のハンドリフトで対応している。車内の対策では、少なくとも1編成1車両のアクセシブル車両(広いトイレや車いすの収納場所がある)を連結する対応を進めている。

ワシントン首都圏交通事業体(WMATA)は、主として地下鉄(メトロ)、バス(メトロバス)を運営し、メトロアクセス(ADAのパラトランジット)は、民間の交通事業者に委託して運営している。70年代の開業ながら、一部の改良工事だけで、ADAに対応することができたアクセシブルな地下鉄、リフトの装備率が77%のバスなど、すぐれた公共交通を提供している。また、ADAオフィスを設置しアクセシビリティ対策に取り組んでいる。

 

・カナダの交通のアクセシビリティに関する政策

 

3章では、カナダの交通のアクセシビリティについて述べた。政府レベルでの政策および、運輸省に関連した研究組織、交通事業の規則の策定と監督を行う組織、交通事業者における取り組みについて述べた。

カナダ運輸省では、「最適な交通システム実現のための開発および政策、規則の策定、サービスの管理」を軸に交通のアクセシビリティの確保に取り組んでいる。まず、70年代初頭からの運輸省の外郭研究機関である交通開発センター(TDC)の取り組み、1979年の「障害者の交通ニーズに関する諮問委員会」、1980年の「障害者に関する国会特別委員会」の設置が以後のアクセシビリティ対策を促進させたことが明らかになった。続く、1981年(国際障害者年)にまとめられた報告書『Obstacles』における交通分野への提言、1982年の「カナダ人権法」、同年の「権利および自由に関するカナダ憲章」により、人権法、平等権の観点からアクセシビリティ対策が進められている。さらに、1991年には「障害者の社会参加のための国家戦略5ヶ年計画」が発表され、雇用、住居、レクリエーション、コミュニケーション、および交通へのアクセスを向上させ、コミュニティヘの参加を支援するプログラムが展開された状況を述べた。

 

・カナダの運輸省関連組織の取り組み

 

交通開発センター(TDC)は、カナダ運輸省により設立された同省の外郭研究開発機関である。交通システムの安全性の確立、アクセシビリティの向上、環境の保護を目的として、交通の技術革新を進めている。研究ライブラリーおよび出版部門を通じて情報提供およびコミュニケーション・サービスも行う。50名の専任スタッフが100余りのプロジェクトに携わっている。TDCのこれまでの経緯や開発の成果等を述べた。

 

 

 

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