MUNIはケーブルカー、ライトレール、バス、トロリーバス等を運行している事業体である。ライトレールを中心にアクセシビリティ対策が進んでおり、旧型の車両でも、プラットホームのかさ上げ改善やハンドリフトの導入により、車いす等の利用を可能にしている。また、定期開催されるアクセシビリティ諮問委員会(MAAC)を設置し、様々な意見を反映させながら、情報発信、視覚障害者への対応等のアクセシブル・サービス・プログラム(ASP)を実施している。
BARTは5路線、153kmで運行する鉄道で、都心部では主として地下を走行する。そのため駅へのアクセスに関しては、エレベーターの設置を始め様々な対策が取られている。高齢者・障害者向けのアクセシビリティ・サービスの利用案内冊子やインターネットによる情報提供を積極的に行っている。例えば、駅周辺の道路から駅へのアクセスし易い場所が判断できるエレベーター設置場所等の図面がホームページで提供されている。その他にも駅周辺の障害者優先駐車場の確保、駅構内の駅員直通電話の設置、エレベーター・コール・カードなどの対策が進められている。
その他の交通システムとして、一般のタクシーとして運行を開始している、車いすで乗車可能なスロープ付のランプタクシーについて述べた。1994年にMUNIが試験的に導入を開始して以来、徐々に民間事業者での導入が増えている。こうした車両はADAのパラトランジットにも利用されている。
<ボストン>
ボストン市および周辺の都市域を管轄するマサチューセッツ湾岸交通事業体(MBTA)のアクセシビリティ対策について述べた。MBTAは地下鉄、通勤鉄道、トロリー、ライトレール、フェリー、バス、パラトランジットを提供している。
地下鉄は3路線、53駅で運行しており、およそ68%(36駅)の駅でエレベーターが設置され、車いすでの利用が可能である。また、ライトレールのグリーンラインは低床車両が導入される予定である。ライトレールやトロリーでは、ホームが低く、既存の車両の乗降には3段のステップがある。そのため、駅には手動式のリフトや、一部ではホーム上にスロープを設置し車両にブリッジプレートを渡して乗車する方式を採っている。通勤鉄道はほとんどの駅でアクセシブルになっており、現在も一部で改善工事が進められている。
バスは、全車両のほぼ9割がニーリングバスである。また、リフト付バスも増えている。しかし、全ての路線でいつでもリフト車が利用できる状況ではないことから、前日に乗車通告を受け、確実にリフト車を配車するサービスも実施するなど対策が取られている。
MBTAではADA以前からパラトランジットを運行しているが、ADA以後、需要が大きく伸びて対応しきれない状況が生じている。また、最近では歩行可能なパラトランジット利用者も増えているため、セダン車両を導入した低コストのプログラムを実施している状況を述べた。
<ワシントン>
首都ワシントンD.C.における公共交通事業のアクセシビリティ対策について述べた。交通事業者として都市間鉄道のアムトラックおよびワシントン首都圏交通事業体(WMATA)について概況をまとめた。