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これは、保育制度の改革設計ともいうべき「これからの保育所懇談会:提言(1993((平成5))年4月)」と「保育問題検討会報告書(1994((平成6))年1月)」の各報告を貫く問題意識から生まれたものと考えられる。

まず保育問題検討会は、「時代の変化に応じた利用しやすい保育所の確立に向けての取り組みが要請されている」とし、改革の方向を打ち出したのであった。これは先立って設置された保育所懇談会の結論を承けて審議されたことから当然であるが、問題意識として共通する。それは懇談会が「育児と仕事ができる柔軟な対応体制の確立及び家庭養育支援という二つの観点から、保育サービスが展開できるよう必要な制度改正の検討」を引き継ぐものであったからである。

ここには、少子社会において子どもの成育条件と環境が、家庭と保育所の相互関係によって保持されねばならないとする認識がある。立法されて50年、児童福祉法は形作る理念や価値観の転換を行うことになる。ともかく、子育てと仕事の両立と家庭養育の支援体制を構築するものとして、保育制度改革は始まったのである。特に後者の家庭養育の支援を柱とし、地域社会を包み込む条項を規定し、保育所の責務とした意義は大きい。

他の児童福祉施設にあっては、設置目的が一般的に規定され、任務についてふれる条項をもたないことからすれば、特異であるといわなければならない。これは取りも直さず、児童福祉法の改正目的の多くが、保育制度の改革にあったことを示すものであるからである。

 

 

 

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