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3 保育制度の改革と「地域の子育て支援」

 

大正大学教授 野坂勉

 

はじめに

 

現在、わが国は21世紀を前に、少子高齢化に適合する経済的社会的仕組みと、個人、家庭の生活システムを構築する試みが模索されている。すなわち、「行政改革」、「地方分権」、そして「規制緩和」をキーワードとする制度改革は、1945(昭和20)年、敗戦を契機とする戦後改革にも匹敵する規模とパワーで進展しつつある。

かかるなか、保育所と幼稚園との「施設の共用化」、「合築」、幼稚園の「預かり保育」と称する保育所化など、制度間に溶解現象が発生している。また社会福祉基礎構造改革(社会福祉事業法等改正法案大綱骨子・1999((平成11))年4月)として、事業主体に民間企業の参入が予定されるなど、社会福祉の既成概念を超える方向が打ち出されている。そこでは乳幼児の保育をめぐって市場化し、生存競争と自然淘汰に強くさらされる部分のあることを予想させる。

改めて、激動する時代状況において転機に立つ保育所の課題は、その存在理由を地域社会にメッセージとして発することである。すなわち、これまで担ってきた子育てと仕事の両立を可能にしてきた実績と能力が、地域における子育て支援の社会資源であり、拠点施設であることの有用性をアピールできなければならない。

 

I. 法48条の2―条項成立の意義と周辺

 

改正児童福祉法は、保育所の法的地位にかかわる条項を新たに起こし、48条の2「情報の提供、並びに保育に関する相談」を規定している。

 

 

 

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