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このような時、お母さんにお願いするのは、「これ好きなのに取られそうになったのね」、「これ欲しくなっちゃったのね」などと、子どもの感情を汲み取ってかかわることです。

人は、自分の怒りや悲しみの感情をしっかり大切に受け止めて生きられる時、より自分らしくいられます。それにはまず誰かに受け止めてもらうことが必要で、その体験を積み重ねて始めて他人への思いやりの気持ちが育っていくのです。

母の胸の中で感情をなだめてもらい少し気持が治まりますと、案外すんなり次の遊びに移ったり、泣いている相手に目がいくことがあります。このことは、子どもが自分の感情を大切にしながらも相手を思いやり、自分をコントロールする力を自ら育てることに繋がっていきます。

子どもが自分の身体と心をコントロールできるようになることを大人が援助するのがしつけの基本であることを、おもちゃの取り合いをとおして、お母さんたちに理解していただこうと思っています。

・自然な交流が生まれる

テーブルの上に模造紙を用意しておきますと、親子が殴り書きを始めます。子どもの「アンパンマン」との声に応えてアンパンマンを描くお母さんもいれば、「自分で描きなさい」を繰り返したり、2歳の子どもに形あるお絵描きを期待するお母さんもいます。クレヨンを持ったまま動かない子どもの様子に私は、「描いて欲しいのね」と子どもの気持ちをお母さんに通訳します。

自分の子どもだけでなく、他の子のリクエストに応えてくれるお母さんもいて、子どもたちの声が次第に活発に大きくなり、言葉や動きに模倣が生じます。そして最後には何人もの親子が加わって勢いよくぐるぐるの殴り書きに発展したりします。

 

 

 

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