「T君が女の子を含む大きな子、3、4人にたたかれていた。わが子を見守っていた母親が気づいて連れ出し、センターの担当に知らせた。担当者はそれを5歳の担任に伝えた。T君は泣きやみ遊びはじめ、母親もその物置の近くで子どもたちと話をしている保育士の姿を見て、帰宅した」とのことでした。
“5歳の担任に話をしてあるので、その後の状況を聞いてからT君には話す方がいいのでは”と判断し、2時から始まる実習の会場へと出かけてしまっていたのです。
その日は3月の始め、11時過ぎの園庭には5歳児50人位と2人の担任、タンポポの会の20組の親子が遊んでいて、5歳児の跳び箱の遊びにも2、3人が仲間入りしていたそうです。が、そのトラブルには、その時には誰も何も気づいていなかった。そして失敗が重なってしまったのです。
この時点で、T君が5歳児の熱中した遊びの迷惑になっていることに担当者が気づいていれば問題は起こらなかった。また母親から知らされた時の対応の仕方、心を残して帰宅した親子への配慮、そのどれもが欠けてしまっていたのです。
それから何日も経ってタンポポ広場に姿を見せたT君は、いつものように元気に遊び、お母さんもあのトラブルを気にしながらも穏やかでした。園児たち、5歳児たちもあのようなトラブルが起きたことなど微塵も感じさせないほどいつも通りの活発さで、賑やかに遊び回っていました。
「もう少しあの時、私がただ一人の大人としての対応をしていれば、こんなにお騒がせすることもなかった、主人にも叱られた。子どもと逃げることが精一杯だった。子どもに納得させることが大切だったのに」とお母さんも話してくれました。