日本財団 図書館


その頃、このようなことがありました。入園できなかった子ども(2歳)と祖母の2人は、風雨の日以外は毎日門の前で腰を下ろし、おしゃべりをしたり、持参したままごとを広げて邪魔をしないように気を使いながら遊んでいるのが目に入りました。そのうち園児が散歩に出かけると、少し間をおき、2人でついていくようになりました。やがて園児の中に入り、一緒になり自然に仲間関係ができ、園児の方も門前にいる2人に声をかけるようになりました。祖母も次第にうちとけて挨拶するようになり、家族構成のこと(祖父母、父母、子ども2人、使用人2人)を話すようになりました。

入園できない理由として分かったことは、祖父、父母は仕事に従事しているのは分かるが(保育に欠ける)、祖母が家にいるので孫の世話は年齢的にもできるとのことだったようです。祖母の話では、食事のこと、掃除、洗濯は何とかできるが、孫と一日中遊んだり、世話をすることは重荷になっている。交通量も多いので、事故があったらと考えるだけでも心痛で体調をくずしている……。しかし、園では欠員がなく入園をしていただくことは無理なのですが、今まで通り2人が園庭に入ってきたら、子ども集団の中に自然に入ってもらうようにしていました。また祖母の方は井戸端風で話をお聞ききし、相談を受けるようになりました。始めは世間一般の社交辞令が多く入る話で、こちらは一方的に聞くだけでした。何日かたって祖母も、誰かに話をした、共感してもらえた、お互いに信頼の上での井戸端風相談でしたので、安心したのでしょう、いつ頃からか食物のこと、自然のことなどの話題も多くなってきて、リフレッシュしたように思えました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION