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「在日外国人」というマイノリティ特有の問題は共通して存在するが、それぞれのグループに特徴的な母子保健上の解決課題もある。ことばの問題は、すべての「新しい外国人」ニューカマーに共通しているが、夫婦ともに外国人で、来日後問もなく妊娠・出産を経験する人達には、特に母子保健上の援助が必要である。国際結婚をした「外国人花嫁」の場合、日本の家族社会への異文化適応、欧米人(西洋人)の場合、多くは医療現場でのインフォームドコンセントが課題となっている。オーバースティ妊産婦および子どもは、母子保健上の最もハイリスクグループである。1]「不法」である事が理由となり、必要とされている状態にありながら保健、医療、福祉、保育、教育の適用を受けていない、あるいは受けられない状況であること。2]劣悪な生活・労働環境とそれに伴う人権侵害が考えられる。適切な対策がなされなければ、日々、新たにその問題は深刻さを増し人権侵害が次世代にもわたる。

 

3. 子どもに関する「内外人平等の原則」

在日外国人の子どもへの保健医療福祉支援にあたって最も重要なことは、すべての子どもは、慈愛の中で育まれ、健やかに成長する権利を有しているということである。この原則においては「外国人」「日本人」の区別はなく「内外人平等」の原則が適用される。また、親の「在留資格」は問わない。この原則にのっとって、1994年、「子どもの権利条約」が日本で批准、発効されている。これまで、日本は1979年に「国際人権規約」を批准しているが、その国際法の根幹には「世界人権宣言」(1948年)があり、この条約は国際社会における基本的人権の尊重と保障を基本理念にしている。国内法でいえば、「児童福祉法」(1947年)、「母子保健法」(1965年)が外国人妊産婦及び児童にも適用される。

 

4. 外国人子どもへの支援

1990年以降、最も急増したのは「ブラジル」国籍(出身地)の親をもつ子どもである。15歳未満のブラジル国籍の子どもは1990年2,682人から、'98年31,947人と11倍以上に増加している。その中には日本で出生した子ども、親とともに来日した子どもがいる。幼児期、学童期に達っして来日した子どもにとって、保育園、学校等での生活はその成長、発達に極めて重要な社会環境である。特に最初の受入れ、対応がその鍵をにぎる。

 

 

 

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