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講演II

外国人保育における母子保健活動

李 節子(東京女子医科大学助教授)

 

はじめに

「人」の国際化には目をみはるものがある。この数年、日本の年間海外旅行者(出国者)は1600万人、外国人旅行者(入国者)は400万人を超えている。海外在留邦人も急増しており('98年、約80万人)、日系人を含めると海外で暮らす日本人は約200万人である。又、'98年の外国人登録者「外国籍住民」は150万人となり総人口の1%を超える。その国籍(出身国)は多様化しており、日本国内における「内なる国際化」がめざましい。当然のこととして、大人が国境を超えて移動すれば、それに伴って子どもが移動し、親の出身国以外での誕生がある。日本国内の「子どもの国際化・多様化」は劇的に進んでいる。その現状に対応した保健医療福祉、保育、教育が求められている。

 

1. 子どもの国際化・多様化の現状

1980年代後半から、日本人と外国人の婚姻件数が急増しており、1998年、日本人の国際結婚件数は過去最高(全国で26組に1組)となっている。それに伴い、父・母どちらか一方が外国人の出生児数も急増している。父・母共に日本人の出生児数が減少する中で、この10年、母外国人・父日本人の出生児は約3倍に増えている(図)。

1987年には、父・母共に外国人あるいは父・母の一方が外国人の出生児割合は全国で1.3%であったが、'97年には、2.8%となり36に1人が、外国人の出生児となっている。これは学校のクラスに1人はいることになる。国際化都市東京都ではさらに、その割合が進んでおり、東京都では18人に1人、新宿区5人に1人である。

 

2. 在日外国人の母子保健医療福祉対象グループ

保健・医療の現場で出会う外国人母子は、大きく次の4つのグループに分けられる。

1]従来からの韓国・朝鮮・中国等の永住者(ほとんどが日本で出生)、2]1980年代後半以降に来日した「新しい外国人」ニューカマー、3]いわゆる欧米人、4]オーバースティ・資格外滞在者である(表)

 

 

 

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