平成11年度保育所保育・保健研修セミナー
講演II 障害と生きる
−「障害」の概念とノーマライゼーション理念−
東洋英和女学院大学 石渡和実
1. 「障害」、バリアとは何か−
(1) 従来の心理学による「障害」
1]少数派、分布の偏り(deviation)
2]価値尺度:人間の適応にとってマイナス
cf.知能検査の結果でIQ70以下→「知的障害(精神薄弱)」
100人中の95人は「IQ70〜130」の間に入る
全体の中の少数派(100人中の2.3人)
IQ130以上の子:優秀児、将来をしょって立つ子供達、プラスの価値評価
IQ70以下の子:知的障害児、世の中のお荷物(?)、マイナスの価値評価
価値尺度:絶対的な概念ではない、時代・場所によって変わる
(2) 日本語の「障害」
1]「障害者福祉論」などでの「障害」「障害者」:明治以降位の用法
それまでは、今でいう「差別用語」が用いられる
「不具・廃疾・片輪・欠陥」など
障害:害をなすもの、邪魔なもの 障碍:さまたげ、本人が困っている
2]上田の定義:「疾患によって起こった生活上の困難・不自由・不利益」
上田:しかし今大事なことは「障碍者」に変えることではなく、「障害」「障害者」という言葉から、いかにしてマイナスイメージを払拭し、プラスイメージに変化させるか(上田敏(1983):「リハビリテーションを考える」,青木書店.)
(3) 新しい障害者観:障害は人間のさまざまな特性のごく一部にすぎない
3]日本の障害者:「障害は個性である」
「区別」と「差別」と「弱者」の概念(井上雅人)
・区別:違いによって分けること、そして扱いを変えること
本来の「扱いを変える」→必要な配慮をする
・差別:分けて、扱いを変え、共通点に敢えて目をつむること
同じ「人間であること」を否定、これが差別
cf.部落差別:「士農工商」、その下に「えた(穢多)、非人」