17. こうした措置を取る時も、事業活動の民間的性格および外見を維持する必要がある。政治的配慮から、公平・中立・独立という原則は慎重に守らなければならない。
情報支援
18. 軍の情報収集能力は、通常、人道機関よりはるかに優れている。これには難民移動の追跡や用地選定の時に役立つ空中査察による情報などが含まれるが、こうした情報に対する判断や利用には十分な注意が必要だ。他から得られる情報、特に現場のUNHCR職員から直接入手した情報と慎重に照合する必要がある。
人道事業の安全確保
19. 1949年のジュネーブ条約(本書第2章付表1参照)は、紛争当事者に人道援助(humanitarian assistance)へのアクセス付与を義務付けているが、アクセスが拒絶された場合の強制措置は規定していない。紛争当事者は、人道職員や人道事業に対する脅威に対処できなかったり、やりたがらない場合があるので、平和維持の任務には、往々にして人道事業が安全に行なわれる環境作りを含めた、人道職員の安全に関する特定の任務が含まれる。
20. しかし人道支援を援護するために軍事力を使うことは、その性質上、中立を保てず、活動の基本原則を曲げてしまう恐れがある。人道活動を援護するために平和維持軍などの軍事力を使う時は、必ず事前にすべての紛争当事者と人道活動のアクセスを確保する交渉をする。人道支援を援護するための軍事力の使用を、紛争の根本的原因に対する政治的解決策の代わりにすることは決してしてはならない。
21. 人道事業の安全を確保するために平和維持軍を使う必要がある場合、中立的な立場を維持し、この公平性・中立性を全当事者に明らかにすることが特に重要となる。
撤退
22. 人道職員の撤退計画は、現場にいる軍と調整して実施する(第23章を参照)。
◆軍と民間機関の調整
国連による調整
23. 国連の平和維持活動の責任を負うのはPKO局で、戦闘をやめさせるか封じ込めるため、あるいは(紛争当事者間の合意を得て)和平合意の実施を監視するために紛争地域に軍や文民の派遣もする。したがってPKO局は、国連と軍との関係に全面的な責任を負う。
24. 国連軍が配備されると、通常、人道事業を含む、すべての国連事業について全面的責任を担う事務総長特別代表が任命される。
25. OCHA(国連人道問題調整事務所)内に、軍事・民間防衛課(MCDU、本部はジュネーブ)がある。MCDUの任務は、難民緊急事態を含むあらゆる種類の人道事業を支援するため、軍と民間防衛機関の資産の利用が適切な場合、それらの資源を最大限に活用できるようにすることである。国連の人道機関のなかで、MCDUは、政府、地域組織、軍、民間防衛機関などの資産の利用に関しての窓口となる。
原則の確立と任務の調整
26. 早い段階で以下の事項を明確にすれば、軍と文民による機関の間に誤解が生じるのを回避できる。
□ 事業全体の目的と戦略、そのための軍と文民による機関の役割。
□ 各組織または軍の活動の基盤となる基本原則と(現地レベルと世界レベル両方での)任務。
□ 各組織または軍がそれぞれ相手方から期待できる活動、業務、支援、自らの実施能力の限界。
□ 文民による機関と軍それぞれの事業活動における担当部分。決定を下す前の協議がどのような場合に必要か。
□ 人道機関が自らの事業について決定を下す場・機関(第7章中の調整組織など)。