◆はじめに
1. 緊急事態では、優れた通信体制(communications)が欠かせない。有効な通信体制を作るには、適切な機器、インフラ、優れた管理が必要になる。
◆通信管理(communications management)
2. 通信手段の改良で遠隔地からの通信が可能となり、適切な管理が極めて重要となった。通信の仕組みと流れは事業管理の仕組みと流れを反映させ、情報がきちんと体系化された形で伝達されるようにする。
各段階に届いた報告や情報は、分析・整理してから次の段階に送る。
未加工の情報を、実施責任者宛てに送る以外は、機械的に複製して複数の管理レベルに一斉に配信してはならない。情報は、任務の遂行上必要とする者だけに与え、通信の使用も必要な場合のみにする。
3. 発信者は、常に通信文・連絡事項の目的は何か、受信者は誰か、通信文に含まれる情報が目的に対して十分かつ妥当かどうか、などを自問すること。
4. 緊急事態の緊迫した状況下では、不完全な情報が飛び交う傾向がある。(手元にある)情報が連絡の目的に対して不十分でも、事態が急を要する場合は、情報の不足を知らせれば時間の節約になり混乱も回避できる。例えば、「詳細は調査中なので、当面、状況に応じて対応してください」などと断る。
5. 費用、緊急性、情報量を考えて通信文・連絡事項に最適の送信方法を決める。例えば、電子メールで送信できる場合は、電話やファクスは使わない。一方、緊急でない限り、大量のデータは、電子メールでなくUNHCR内部便か郵便(mail)で送ること。
6. 標準書式を使うか、書式を新たに作れば、それぞれの通信方法によって送られる情報のチェックリスト(checklist)にもなり、通信管理の助けになる(適例は状況報告書。第8章の付表を参照)。
7. 効果的な整理・参照システムを使う。これは優れた通信体制を確保するうえで重要な要素である。
明らかに異なる複数の案件がある場合は、案件ごとに通信文を作る。
番号ないし参照記号を正しく付ければ、以前の通信内容を大幅に確認しやすくなる。必要とされた措置を体系的にたどる手立てにもなり、きちんと管理された通信体制を維持できる。文書整理システムの詳細は第20章を参照のこと。付表1で本部通信課が使うUNHCR通信文・連絡事項識別システムについて解説した。
8. すぐに連絡しなければならない場合は、電話や電子メール、ファクスで対応できる。ただし、定期便、速達便、郵便の制度もできるだけ早く確立する。第20章に、事務所の開設時に考慮すべき通信ニーズのチェックリストを示した。『緊急事態管理官チェックリスト(Checklist for the Emergency Administrator)』にも、さまざまな通信手段を確立する手引き・書式・情報が掲載されている。
◆遠距離通信
9. 有効な遠距離通信体制を確立するには、専任者や専用機器が必要になる。通信の必要条件について計画する時は、できるだけ早い段階から地方通信担当官や本部通信課がかかわることで、当該事業に配属する経験豊富なUNHCR通信職員も選びやすくなる。緊急事態時には、UNHCRのスタンドバイ協定に基づいて選ばれた通信担当官を加えることもでき、必要ならばUNHCR通信職員を補うことができる。