35. 図1に、排泄物処理に関する考慮事項を図示した。
36. 衛生設備の設計は、文化的要因(上述)や以下の物理的な事項を考慮して決める。
i. ハエ(flies)や悪臭は、1)さび止めをした金網付きの通気孔の設置、2)糞便への定期的な灰の散布、3)殺幼虫剤のトイレ内散布によるハエの幼虫駆除、4)ハエ捕り器の設置、によって防止できる。
ii. 便槽から糞尿があふれたり、便槽が崩れる事態は高い所に作られた構造物、基礎構造と盛り土の強化、槽のライニング、排水の改善など、適切な工事によって防止できる。こうした措置は、財政的な理由などから行なわれない場合もあるが、安上がりなトイレを急いで大量に作っても、環境保健上の問題が解決されるとは限らない。
iii. 耐用年数――トイレ用の穴掘りは、楽しい仕事ではないので、通常、便槽は2〜3年もつように設計する(最低容量は、未使用の段階で年間1人あたり0.07立方メートル)。容積をきちんと計算しないと、すぐに新しい穴を掘らなくてはならない。難民たちは当然この作業をいやがり、その結果、安全に処理されていない糞便を健康に危険を及ぼすほどためこんだ便槽で用地がいっぱいになってしまう。また、スペース(space)の不足により設置できるトイレの数も限られる。
iv. 清潔さとプライバシー―― 共同設備が清潔に維持されることは稀であり、ごく短期間で使えなくなり、病気の伝染を促進することになる。したがってなるべく世帯ごとにトイレを設置するのが望ましい。衛生施設は利用者のプライバシーを守れるようにし、建物の中で区切りとなる壁を設ける。家庭・個人レベルでは、社会文化的配慮から男女別のトイレが必要とされる場合が多い。こうした簡単な基準を無視すると、誤用されたり使われない可能性がある。
v. 場所――地下水の汚染は皆無または最小限にとどめなければならない。トイレは、いずれの地下水源からも最低30メートル離れた場所に設置し、便槽の底が地下水面から最低1.5メートルは上にあるようにする。また、利用者の住居近く(50メートル以内)に設置する一方、悪臭や害虫によって人々が不快感を覚えたり被害を受けないよう、住居などの建物に密接させない(できれば住居から最低6メートル距離を置く)。
37. トイレにはさまざまな形態がある。まず文化的・物理的要因を検討したら、主に低費用、設置の簡便性、メンテナンスのしやすさを考える。
トレンチ(溝)式トイレ
38. 溝は2〜3カ月使用できる。スペースに余裕があって、必要なら、溝が一杯になるごとに新しい溝を掘れば長期的に使える。
トレンチ式トイレ(trench latrine)は、深さ1.8〜2.5メートル、幅75〜90センチとする。100人あたり3.5メートルの溝が望ましい。
39. 足場と構造物が必要で、フタ付きの適当な便座またはしゃがみ穴をつくる。溝が上から30センチの所まで一杯になったら、土をかけて固める。側面が崩れる恐れがある場合は強化する必要がある。
ピット(便槽)式トイレ
40. ピット式トイレ(pit latrine)は、世界中で使用されている最も一般的な排泄物処理システムであり(図2b参照)、トレンチ式トイレより大きく優れている点がいくつかある。