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8. 利用可能な水源には、ただちに汚染防止措置をとる。当初は水が乏しく、弱者層の生命を守り他の難民への公平な分配を確保するためは、配給制が必要となる場合もある。給水システムは、長期的なニーズを考え、費用効果が高く効率的な設計・工事をする。また、円滑な運営・メンテナンスのために、簡単な適合技術を利用する。

 

状況把握

9. 飲料用の水源を調査する目的は、需要と比較して、どれほどの水が利用可能かを量・質の面から確かめることである。

 

10. 水のニーズ、すなわち需要を予想するのに特別な専門知識は必要ないが、供給量を見積もるには特別な専門知識が欠かせない。供給量の見積もりとは、水源になりそうな場所を特定し、開発・利用の可能性を評価することである。

 

11. 水源は、以下を頼りに特定できる。1)地元住民、2)難民、3)地形(地下水は川の周辺など低地の地表近くにある場合が多い。地表近くに地下水がある場合、一般に植生からわかる)、4)地図(地形図、地質図)、5)遠隔探査画像(衛星画像、航空写真)、6)過去の水資源調査、7)国内外の専門家(水文学者、水文地質学者)、8)地元住民から水脈を見つける能力があるとされている者、などである。

 

12. 水資源の評価には、水工学や衛生、場合によってはロジスティクスなどの専門技術や知識が必要だ。地形上の利点(勾配など)と欠点(ポンプでの汲み上げが必要かなど)の評価や、難民所在地全体の環境分析もその一部だ。給水システムの組織化にはさらなる調査が必要となり、難民などの受益者と受け入れ社会の社会経済的な特性まで情報を集める必要がある。こうした評価や調査の結果は体系的に整理し、将来データを参照できるようにしておく。

 

13. UNHCRは複数の機関と緊急時用の契約を結んでおり、資格と経験のある水工学者や専門家をすぐに緊急事態に送り込むことができる(詳細は付録1「緊急事態対応資源カタログ」を参照)。地元の専門知識・技術が不十分だと分かったら、すぐに本部の計画・技術支援課に応援を求める。

 

14. 季節要因は、常に慎重に考慮しなければならない。

雨季には十分な供給量も、それ以外の季節では枯渇してしまうかもしれない。

地元の知識、歴史的・水文(すいもん)学的情報、統計解析などをすべて駆使して各季節の状況を見極めること。

 

組織化

15. 難民集団は、受け入れ社会とは異なる経済的・社会的基盤の上に形成されている点に留意する。難民の流入によって地元住民の水資源が酷使されれば、両者の間に緊張関係が生じる恐れもある。地元当局や実施協力機関と特別な取り決めを交わし、適切な運営・メンテナンス(維持管理・設備点検)の手配をする。給水システムに適した技術が利用されるよう慎重に検討し、長期的な運営に必要なもの(燃料、予備部品、管理など)が難民やキャンプ管理者の手に入るようにする。

 

16. 受益者の理解と協力がなければ、安全な水が供給できなくなる可能性もある。できるだけ難民と協力してシステムを開発し、最初から難民をシステムの運営・メンテナンスに参加させる。

 

 

 

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