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概要

状況

よく知られた事実だが、緊急事態では、多くの人命が奪われ(高死亡率)、多くの病人が生まれる(高罹患率)。高死亡率・高罹患率の主因は、はしか、下痢性疾患(コレラ〈cholera〉を含む)、急性呼吸器感染症(肺炎)、栄養失調、マラリア(malaria)である。さらに、不慣れな環境、貧困、不安、人口過密、質・量とも不十分な水、劣悪な衛生環境、不適切な住居、食糧の供給不足といった要因によって、罹患のリスクが高まる。したがってどんな緊急事態でもこれらの要因への対応が必要となる。

 

目的

?b 身体と精神の健康状態をできるだけ高い水準1に維持し、死亡率と罹患率が極度に高くならないようにする。

 

対応の原則

?b プライマリー・ヘルスケア(primary health care = PHC、基礎保健管理)を優先し、水、食糧、衛生、住居、施設計画などの重点分野に焦点を絞る。また、予防的・基本的な治療サービスを提供する。こうした対策は、個別の対応よりも、多くの難民の健康に影響を与えやすい。

?b 保健サービスの開発と提供には、難民を必ず参加させる。

?b 難民に対するサービスは、庇護国の国民が受けているサービスと同レベルにする。地元との均衡が必要。

?b 保健計画には持続性も必要である。継続できない活動は、始めないほうがよい場合もある。そのほうが、実施協力機関と受益者の双方が慣れ親しんだ支援活動が中止になるよりもましだ。

?b 保健サービスの計画、提供者、機関は、患者の権利を尊重し、国内外で認められた保健基準と医学倫理の原則に従わなければならない。

?b 多くの国では、緊急事態によって生じる巨大なニーズに対応するだけの人材・物資がない。経験豊かな国内外のNGOを動員し、緊急の人命救助措置を開始する。地元保健省とのすみやかな調整が不可欠となる。

?b 保健サービスでは、緊急事態で特に弱い立場に置かれる5歳未満児に配慮する。予防接種、給食計画、経口水分補給療法、ビタミンAによる予防法、基本的治療、家族の健康に重点を置く。

?b 保健サービスでは、女性特有のニーズも考慮する。女性はプライマリー・ヘルスケアの提供者として中心的役割を果たす一方、不相応に大きな困難や苦痛に直面する。

?b UNHCR保健調整官(health coordinator)を任命する。その役割は、保健医療計画の責任者として、庇護国政府当局その他の組織と十分に調整しながら、国内外で認められた基準と最善の処置の実施に務めることである。

 

行動

?b 難民の健康・栄養状態を調べ、現在の環境条件で健康に致命的な影響を及ぼす要因を突きとめる。

?b 優先すべきニーズを明らかにし、ニーズを満たす必要措置を決め、その実行に必要な人的、物的、財政的資源を決定する。

?b 決められた必要措置に沿って、コミュニティを基盤とする保健サービスを確立し、関係の協力機関や援助分野と協力して適切な運営・調整機構を作る。

?b 難民を対象に基礎的な保健教育(health education)を推進し、難民のヘルスワーカー(health worker、保健普及員)を育てる。

?b サービスの実効性を監視・評価し、必要に応じて調整する。

?b 保健サービスに関する決定が、適切な評価と監視に基づいて下されるようにする。

?b 緊急事態の状況と保健サービス情報を公表し、事態改善の提唱に努める。

 

1 「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」1996年、第12条

 

 

 

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