◆はじめに
UNHCRの任務(UNHCR’s mandate)
1.
UNHCRには、二つの基本的責務がある。
i. 難民に対する国際的保護の付与。
ii. 難民問題の恒久的解決策の追求。
2. 難民に国際的な保護が必要とされるのは、通常の外国人と異なり、難民は自国の保護が受けられないという事実による。国際的な保護とは、国家が通常自国民に与える保護を、難民が再び国家の保護を受けられるまで、国外において一時的に与えることである。
緊急事態では、何よりも危険にさらされている人々がUNHCRの援助対象者であり、従って保護を受ける資格があることをはっきりとさせる。
3. こうした保護を確保するための法的基盤、保護の目的、提供方法は、明確に理解しておく必要がある。本章はこれらの問題を検討していく。
法律・条約(legal instruments)
4. すべてのUNHCR職員は、難民保護に関わる主な国際法規を熟知していなければならない。特に根幹をなす重要なものは、以下の法規である。
i. 「国連難民高等弁務官事務所規程」(UNHCR事務所規程)
ii. 1951年「難民の地位に関する条約」と1967年「同議定書」
iii. 1969年「アフリカにおける難民問題の特殊な側面を規定するアフリカ統一機構(OAU)条約」
iv. 1984年「難民に関するカルタヘナ宣言」と1994年「サンホセ宣言」
5. 付表1に、これらをはじめとする関連国際法規とその主たる目的をまとめた。
6. 難民は、「世界人権宣言」などの法規や、付表1に挙げた各種法規に規定されている基本的人権(human rights)、ならびに種々の難民法で述べられている難民としての権利を有する。
難民の定義
7. 難民とは、以下のように定義される。
国籍国の外にいる者であって、
(i) 人種、宗教、国籍、もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有するため、
あるいは
(ii) 公の秩序を著しく乱す武力紛争や他の広範に広まった暴力の結果、生命または安全が脅かされるため、
その国籍国への帰国、または国籍国の保護を受けることができない者、またはそれを望まない者。
難民であるか否かは、公式な認定ではなく、難民の定義にあてはまる事実の有無により決まる。
◆緊急事態における保護
8. 現場におけるプレゼンスと即時対応は、UNHCRの目標を達成するために極めて重要である。追放・強制送還(refoulement)、恣意的な拘禁、虐待など不当な扱いを受ける恐れがある場合はなおさらである。
緊急事態における国際的保護(international protection)は、以下を目的とする。
(i) 入国と、最低限でも一時的な庇護(asylum)の確保。
(ii) 強制された帰還(ルフルマン)の防止。
(iii) 基本的人権の基準に則した難民の処遇の確保。